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藤岡北高教諭  中尾 徹也(藤岡市牛田)



【略歴】藤岡市生まれ。東京農業大農学部卒。1995年、県の農業教員として採用され、伊勢崎興陽高に赴任。その後、富岡実業高を経て、昨年から現職。


アジア留学生受け入れ



◎本県農業のサポーター



 群馬県では1998年度から2010年度まで「群馬県アジア農業高校生受入事業」を実施してきた。この事業は「アジア諸国から農業高校生を留学生として受け入れ、本県農業高校での学習を通して留学生の農業知識・技術の向上を図るとともに、本県高校生との相互理解の促進を図る」ことを目的としている。

 この13年間の交流活動ではインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、モンゴルの5カ国から180人を超える留学生が10カ月間、群馬で農業や日本語、日本の文化を学んだ。彼らの純粋で前向きな取り組みと異国文化から、私たち日本人も多くのことを学び取った。群馬で学んだ留学生という種は、それぞれの国で農業従事者、農業高校教員、農業省職員と、各産業において活躍し花を咲かせている。

 現在、日本農業は少子高齢化による担い手不足や食料自給率の低下、荒廃遊休農地の増加、食の安全性などさまざまな問題に直面しながら、法人化や大規模経営化による経営の強化を図っている。また、消費者の多様化したニーズや農産物の輸入量の増加が進む現状から、日本農業には国際競争力が早急に求められてきている。

 そのため、日本の農産物の安全性や高品質による諸外国でのブランド力や広大な農地を機械化によって省力化する難しさから、海外の消費者や広大な土地に目を向けた積極的な経営戦略を迫られてくるはずである。

 このような農業を取り巻く環境の中、アジア5カ国に180人を超える群馬県のサポーターが存在している。留学生は群馬での高校生活やホストファミリーとの交流を通し、県民の優しさや人情に触れた。愛情たっぷりのお弁当や甘くておいしい群馬産の野菜や果物、焼きまんじゅうやおっきりこみといった郷土料理の味を忘れることのできない彼らは、本県農業にとって強い味方である。

 日本農業の課題である食料自給率向上や国民へ安定した食料の供給を図るために、これから日本農業は世界に飛び出していかなくてはならないであろう。そのときに応援してくれるのが、日本の高品質な農産物を知り、高い農業技術力を学んだ留学生のはずである。彼らが群馬の農業と世界を結ぶ懸け橋となり、農業の発展に貢献してくれることを願っている。

 将来、次代を担う群馬の農業高校生と留学生が手を取り合い、それぞれの地域や国で活躍し、互いの国の農業の発展や国際感覚を持った人材の輩出へとつながってくるであろう。この群馬県で行ってきたアジア諸国との交流活動で、そんな成果を期待したい。






(上毛新聞 2011年4月20日掲載)