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ライフ・プランニング・センター「新老人の会」群馬支部事務局長  
                               吉江 福子
(前橋市上小出町)



【略歴】旧吾妻町出身。渋川女高、昭和大薬学部卒。薬剤師。介護支援専門員。病院や福祉施設、調剤薬局に勤務し、「新老人の会」群馬支部事務局長として活動する。


幸せの「黄色いピアノ」



◎被災者支援へ演奏会を



 県庁昭和庁舎南ロビーに「黄色いピアノ」が置いてあります。阪神淡路大震災に縁のあるピアノです。

 震災の後、芦屋の駅前で「芦屋市国際交流協会」の人たちが、被災された方に少しでも元気になってほしいと演奏会を開いていた時、芦屋市民病院の職員から「病院のピアノが壊れたのでピアノがないか?」と相談を受けました。すぐに会のメンバーで、黒でない幸せの「黄色いピアノを送る会」を作り、たくさんの方の協力で「黄色いピアノ」を贈呈しました。

 そのことを東京の勉強会で一緒の方から紹介され、群馬にも「黄色いピアノ運動」を広げないかと話が進みました。その後、県内の多くの方のお力をいただき、「ねんりんピックぐんま」で県庁に贈りました。記念コンサートには「新老人の会」の日野原重明会長のメッセージをいただき、会報でも紹介しました。その後「命の大切さを考える」をテーマにしたコンサートや講演会等に活用し、中越地震の時は「震災後の心のケア」の問題について講演会を開催しました。

 私が音楽療法と出会ったきっかけは、1995年ごろのことです。当時、調剤薬局は少なく、薬剤師が在宅に入っていくのは難しいことでした。しかし、高齢化が進むにつれ、福祉と医療が一体になる時代がすぐに来るように思いました。その中で私は福祉分野に入る方がその中の薬のことが分かるのではないかと思い、機を得てデイサービスセンターの施設長の話を受けました。

 でも、薬だけでは解決できないことばかりでした。その中で音楽療法を見つけたのです。つえがないと歩けない方が地域の民謡に合わせ、つえを忘れて踊ったり、カラオケで元気になったり、音楽で心を慰められる方がたくさんいました。「人の心にはもともと自分を元気にする能力があり、音楽はその手助けができる」と感じました。

 日野原会長は早くから音楽療法の啓蒙に力を入れ、臨床の中でも心の問題が大事であり、心と体が弱くなった時に人の言葉や音楽が力を与えると、福祉・医療両分野で教育されました。そのことを学ぶ機会を得られ、私にとってはとてもありがたいことでした。

 東日本大震災が発生しました。あまりにも大きな災害です。99歳の日野原会長はすぐに見舞金・義援金の呼びかけを始めました。被災地では「新老人の会」支部の方も大変な状況下で頑張っています。東北支部長のドクターから状況をお聞きすると言葉も出ません。そして「自分たちでできることを探すしかない」と思いました。群馬支部はその一つとして、「黄色いピアノチャリティリレーコンサート」を開催しようと相談を始めました。お手伝いくださる方、演奏してくださる方を探しています。






(上毛新聞 2011年4月21日掲載)