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                   柴田 直美(横浜市)



【略歴】横浜市出身。南山短期大卒。元ぐんまちゃん家店長。日本経営協会などでマナー研修、語学研修の講師として指導。専門分野はCS(お客さま満足度)向上。


ぐんまちゃん家を離れ



◎数多くの出会いに感謝



 前橋公園のソメイヨシノ。見る人を感動させる品格あふれる佇(たたず)まいを見て、ぐんまちゃん家の店長に就任してから出会った方々を思い浮かべた。私事で恐縮だが、去る3月31日でぐんまちゃん家の店長としての任期が満了した。約1年の間に、実に多くの方々と接することができたが、とりわけ群馬県の取引先の経営者の方々と上司には本当にお世話になった。この場をお借りして感謝申しあげたい。

 まず、群馬県の経営者の方々であるが、その経営姿勢には本当に感動させていただいた。ほんの一例をご紹介する。だるま制作会社を経営する方は、いつも腰が低く謙虚な応対をされる。その姿勢からは、だるま制作に対する誇りとだるまを通じて社会に貢献するという信念が感じられる。酒造会社を経営する方はトップセールスに徹し、常にご自身の足で動かれる。とにかくフットワークが軽やかなのである。自社商品への深い愛情と自信があればこその姿勢である。

 どなたにも共通するのは、売らんがための姿勢ではなく、心をこめて作った商品を1人でも多くのお客さまに利用してもらいたい、そして実際に利用されているお客さまに対して心から感謝の気持ちを伝えたいという真摯(しんし)かつ一貫した姿勢である。

 経営にはさまざまなスタイルがある。しかし、成功する会社には必ず優れた経営者が存在する。優れた経営者とは、その背景にある思いはさまざまであるとしても、人の心を動かすだけの説得力ある経営姿勢を貫いている方をいうのではないかと思う。

 次に上司であるが、私には2人の上司がいた。私を採用してくれた上司と育ててくれた上司である。2人とも職場の空気だけで組織の現状がわかる方であった。部下の喜びや苦しみを理解できる方であった。何よりも感動したのは、仕事がうまくいくかどうかは本人の心がけと努力次第だという環境を、部下が知らない間に陰ながら整えてくれたことである。上司の部下に対する責任とは何かを教えていただいた。

 多くの場合、部下は上司を選べない。部下を尊重し、幸せにできる上司に出会えたことに心から感謝しているし、このような上司に出会う機会を与えてくれた群馬県にもありがとうと申しあげたい。

 こうして思い起こすと、ぐんまちゃん家を通じて出会った方々には、前橋公園のソメイヨシノに匹敵する品格が備わっていた。今、群馬から離れ、こうした方々を思い出すにつけ、群馬をいとおしく思うのである。そして、皆さんから与えていただいた感動を心の糧に、私自身も、これから出会うであろう多くの人たちに、品格を感じてもらえるような人間になりたいと強く思うのである。






(上毛新聞 2011年4月27日掲載)