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アウトドア・ツアー会社「カッパCLUB」社長  小橋 研二(みなかみ町小仁田)



【略歴】岡山県生まれ。1996年、アウトドア・ツアー会社「カッパCLUB」設立。ラフティング・ツアーをはじめ、スポーツイベントの企画運営、開催を手掛ける。



アウトドアガイド集結



◎能力生かし被災地支援



 3月11日に東日本を襲った大震災の破壊力は、テレビの画面や新聞の紙面を通してでさえ、世界中の人々に大きな衝撃を与えました。普段から自然に慣れ親しみ、その恩恵を受けている私たちアウトドアツアーに携わる者にとっても、筆舌に尽くし難い思いを抱かされました。自然が持つ力の強大さ、それに対してわれわれ人間が抵抗できる力の小ささをあらためて感じざるを得ませんでした。

 しかし、たとえ微力ではあっても、自然と向き合ってきた日々の中で身につけた能力を活用して、われわれにできることを行動に移したいという気持ちが、震災直後から強く心に湧きあがりました。そして、思いを同じにする、みなかみ町在住のアウトドアガイドが集い、「みなかみレスキュー&サポートチーム」を結成して活動が始まりました。

 普段アウトドアツアーを行う上でリスクコントロールは最重要課題です。安全性の確保は全てに優先されます。ここでの行動規範も同様に、チームとして自己完結できるかどうか、現地で考えられるリスクにどう対処できるかが課題でした。当初、被災地の状況が分からない中での出動では、起こり得るリスクを考え、それにどう対処するか議論を重ねました。実際に始動したわれわれの被災地での活動は、救援物資の運搬、避難所での食事の提供、被災家屋内のヘドロ除去や片付け、現地で活動する団体との連携などです。

 一つの部隊が被災地から帰着するごとに報告会を開き、現地の情報やノウハウをチーム内で共有した上で、次の部隊の活動方針を決定しました。何もかもが、誰にとっても初めての経験であるがゆえ、チームが常に同じ方向を向いて活動することが、自己完結できるボランティアとして重要であることを実感しました。

 みなかみ町では、県内他地域と同様に被災者を積極的に受け入れています。われわれも町の被災者受け入れ用のバスに添乗して移動のサポートをしたり、町内に滞在する子供たちにアウトドアのプログラムを提供するという活動にも町と協力して取り組んでいます。支援活動を円滑に進めるためにも、官と民の協力体制は大切であると思っています。

 現在もチーム本部は、みなかみ町観光協会内に設置させていただき、活動しています。ここには、町内外から多くの支援物資や義援金、そして人材が集まりました。われわれの活動は、本当に多くの人々の厚い善意と熱意に支えられて成り立っています。自分たちにできることを考え、必要とされている行動をする、単純なようで難しいことですが、これからもチームとして、アウトドアズマンの特性を生かし、地に足のついた活動を、長く続けていきたいと思っています。






(上毛新聞 2011年5月5日掲載)