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イルミネーションデザイン・企画  斉藤 任俊(太田市鶴生田町)



【略歴】渋川市出身。米サンフランシスコ大卒。添乗員の傍ら、イルミネーションをデザイン、企画する。2008年から太田市でのイルミネーションを手掛ける。



照明と節電



◎多灯分散で省エネ効果



 東日本大震災で損傷した福島第1原発の事故に伴い、東京電力管内では今夏のピーク時の電力不足が懸念されています。照明関連に携わっている者として、今夏に向けての節電策を照明器具の進化を見ながら考えてみました。

 1879年にエジソンが実用炭素電球を発明しました。フィラメント部分に京都の竹を使用していたのが特長です。1882年に銀座でアーク灯が点灯され、初めて市民が電灯を見ました。1884年には高崎―上野間の鉄道開通式で、白熱灯が初めて点灯されています。

 さらに1886年、東京電燈(現在の東京電力)が電燈の普及を見越して開業しました。1933年にはアメリカのインマンによって直管形蛍光ランプが発明されています。

 戦時中は灯火管制で、空襲を避けるために外へ明かりを漏らさないよう電球を覆い、真下だけを照らす暮らしでした。1950年くらいから蛍光ランプが普及し始め、その明るい光は敗戦を乗り越え、豊かで明るい暮らしを夢見る象徴的な光となりました。

 このころから建ち始めた住宅には蛍光ランプが取り付けられ、欧米諸国の多灯分散型とは違い、1室1灯で部屋全体を白く明るくする照明文化が根付いてきました。蛍光ランプが家庭にまで普及したのは欧米諸国では見られない現象です。

 エネルギー消費量に占める照明用エネルギーの割合は、オフィスで約21%、家庭で約16%といわれています。最近では古くなった家電製品を最新式の物に替えるだけで大幅に節電できます。

 照明器具も旧型の蛍光ランプから最新式のインバーター式の蛍光ランプに替えるだけで消費電力を大幅に減らすことができ、なおかつ温暖化ガスを削減することができます。最新式と30年前の器具では約32%、20年前では約24%、15年前では約10%の省エネ効果があるといわれています。

 家庭でも1室1灯の部屋全体を照らす照明から電気スタンドなどを使用した多灯分散型にして、必要な部分だけを照らし出すことで省エネを実現し、生活環境をより豊かに演出することができると思います。

 学校においても全校舎の80%近くが築20年を超えており、旧型の照明器具が使用されています、消費電力の大部分が照明用の電力です。最新式の照明器具に交換することで明るさを1・7倍にアップでき、約13%の省エネが可能です。照明器具のリニューアルで節電、コストダウンによる経営効率の向上、家庭においてはより快適な生活空間の演出ができるよう願っています。






(上毛新聞 2011年5月7日掲載)