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スポーツコーディネーター  藤口 光紀(東京都大田区)



【略歴】旧粕川村出身。慶応大学卒。サッカー日本代表、浦和レッズ社長を経て、現在広島経済大学教授、日本サッカー協会・Jリーグ参与、新島学園短期大学客員教授。


合宿の意義



◎交流深め信頼関係築く



 この4月から広島経済大学の教壇に立っている。今までも埼玉大学、千葉大学、新島学園短期大学等で客員教授として、スポットで90分授業をしたことはあったが、1年間を通して行うのは全く初めての体験で、新たな挑戦でもある。

 東日本大震災の直接的な影響を受けていない広島では、新年度のさまざまな行事は粛々と行われている。広島経済大学の入学式も予定通り4月1日に挙行され、新たな希望を抱いた1年生が元気に参列した。彼らにとっては一世一代のビッグイベントで、人生の節目として何事もなく無事に入学式ができたことを素直に喜びたい。

 本大学では授業の開始前に1年生全員を対象に新入生セミナーを1泊2日で実施している。今年から新たにスポーツ経営学科が開設され、70人の1年生が入ってきたが、そのフレッシュな学生たちと4月9、10の2日間、国立江田島青少年交流の家で寝食を共にした。

 セミナーの目的には「新しい友だちをつくること。そして、ゼミの先生と親しくなること」を掲げている。新しく始まる大学生活に対する期待と不安、多くの知らない人の中で仲間が見つかるのか、信頼して相談できる先生は見つかるのかといった不安を吹き飛ばしてもらおうというものである。

 寝食を共にし、清掃、役割分担、グループ活動等を通じてお互いの信頼関係を構築し、共に交流を深め、友人づくりに大いに役立ったものと思う。 プログラムの一つにカッター研修があるが、非常に意味のあるものと感じた。今だからこそ必要な要素がいっぱい詰まっている。「大きな声を出せ。ダラダラするな」教官の大きな声が響き渡り研修が始まる。学生は最初のうちは戸惑いもあったが、カッター研修も終わりに近づくと、みんなで大きな声をあげ、気持ちを一つにして漕ぎ、心地よい疲労感と達成感を得て、ボートを降りたのであった。

 1年間担当する入門ゼミ生15人と行動を共にし、コミュニケーションを図ることで名前と顔が一致し、一人一人の性格的な違い等の一面を垣間見ることができ教員にとっても非常に有意義な時間だった。一つ屋根の下での共同生活の意義は大きい。

 昨年の南アフリカで開催されたワールドカップの日本代表事前キャンプでは、心と体のコンディション調整に成功し、チームの団結力が強まり本大会でベスト16になったことは、まだ記憶に新しいものと思う。キャンプの効用をあらためて感じた大会であった。

 まずキャンプの目的・趣旨を明確にし、いつ実施するかタイミングを計り、どのような環境を選択するのか、しっかり計画を立て実行することが成功への鍵である。






(上毛新聞 2011年5月9日掲載)