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奈良ADHDの会ポップコーン教育相談員  西田 清(奈良県橿原市)



【略歴】東吾妻町矢倉出身。岩島中、渋川高、奈良学芸大卒。奈良県内の小学校、養護学校に勤務。奈良自閉症協会、奈良ADHDの会事務局長を経て現在教育相談員。


大学に合格したA君



◎医師、教師、両親が結束



 3月のある日、A君がわが家に「西田先生、大学の経済学部に合格しました」と報告に来てくれました。A君は12年前の小学1年のとき、ADHD(注意欠如・多動性障害)とLD(学習障害)を併せ持っていました。知能指数は標準的でしたが、多動性と注意欠如のために皆と一緒だと授業に集中できない。また、漢字は読めるが、書写が困難というLDもありました。私が特別支援学級でA君を担任し、国語と算数、集団でのルール、友だちとの関わり方を指導しました。

 保護者の理解と協力で、精神科医にADHDの診断を受け、薬を小学1年から服用、高校3年までコンサータを服用しました。小学3年の時には、前回紹介したペアレントトレーニング(両親教育)を保護者が精神科医から受けて実践。同時に、保護者・医師・教師らが「奈良ADHDの会」を結成して、私は事務局を担当し、会員同士で子育てや教育について経験談や意見を交わしました。学習面では、国語と算数は中学卒業まで支援学級の個別指導で学力を伸ばし、堅実で熱心な公立高校に合格。中学や高校では親友もでき部活にも参加しました。

 そして今年の春、みごと大学に合格。「幼稚園や小学校の時の、彼のすさまじく大変な様子を思い出すと、このような日を迎えられたのが夢のようですね」と彼の両親と喜び合いました。幼児期から中学3年までの彼の子育てと教育については前回紹介した「ADHDの子育て・医療・教育」(クリエイツかもがわ発行)に詳しく載せてあるので、参考にしてください。

 発達障害の幼児期からの子育ての重要事項を以下に記します。

 (1)二つの動きを同時に行う統合的な運動機能が弱く、不器用なことが多いので、幼児期から手指の操作を重視。家庭内の簡単な手伝いなどさせて、身辺処理ができるようにする。

 (2)話し言葉や書き言葉を獲得するため、想像力を豊かにするため、親は絵本の読み語りや絵を描く活動を重視、言語野の発達に注視する。

 (3)LD等で文字を読めても漢字が書けない場合には、パソコンを使用⇒就職が可能に。

 (4)低学年から障害に即応した個別指導で、学力の低下を防ぎ、得意な面や学力を伸ばす。

 (5)幼児期からペアレントトレーニング(両親教育)で、保護者は子育ての具体的な対応方法を身につける。子育ては親育てでもある。

 (6)自分の感情(うれしい、悲しい、困った、怒り)の表現方法を具体的に教え、顔の表情等練習し感情表現や動作ができるようにする。長期間かかるが、青年期になると感情表現が身につき、相手の感情表出の意味も理解できるようになる。 次回はLDについて。







(上毛新聞 2011年5月20日掲載)