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管理栄養士  小坂 桂子(高崎市中室田町)



【略歴】明和学園短大卒。病院、老人ホーム勤務を経て現在同短大非常勤講師。NPO法人群馬の食文化研究会理事。ぐんま女性会議で男女共同参画社会推進に取り組む。


食育推進の必要性



◎生きる力に大きな影響



 5年ほど前になりますが、愛媛県今治市への視察の機会を得ました。その時、担当者の方から「当市の学校給食を食べ食育を受けておとなになった若い世代と一緒に、従来型の手法では閉塞(へいそく)感を打開できない事柄に、新しい発想や手法を取り入れ、自負心を育める施策を展開して地域づくりを進めています」という自信に満ちた説明をお聞きしました。さらに、担当者の方から自校式学校給食のメリットについても、客観的にお聞きできました。

 さて、理想的な給食を食べている子どもたちの家庭での“食”についてはいかがでしょうか。毎日の食生活の体験は目に見える成果がすぐには表れないものの、食生活の技能を身につけ味覚を磨くことは、その後の生きる力にも影響するものです。

 食事バランスを考え日常食を改善するためには、伝統的な日本の優れた食事構成を再考することも必要です。飯・汁・菜は基本型ですが、菜には主菜として、魚・肉・卵・大豆製品等を中心とし、副菜には種々の野菜類を配するように考えれば、子どもたちにも食事の構成が身につきやすく食習慣の改善につながると考えられます。

 また、子どもたちに幅広い食歴を与える時には『生きるための食生活』を考えたいものです。質素な中にも簡便で内容の充実した食事とはどういうものでしょうか。健康維持のために効率的な栄養摂取ができるのかの要素を、家族そろって食べたい特に朝食に込めることを大切にしたいものです。元気で生きるための食事には必ず食べたほうが良い安価で簡便な食材が含まれていることが望まれます。子どもの将来(学生の一人暮らし、独身生活、単身赴任生活等)にとって、必要最小限の食品を使用した食事でいかに健康的に食べるかを教えていくことも大切と考えます。

 かつて、健全な食生活と魅力あふれる豊かな食文化がありましたが、最近「食」に関わる問題が大きくなり、国として放置しておけない状況となり、2005年には食育基本法が制定されました。そして、学校では食に関する指導充実のために栄養教諭制度も創設されました。

 では、就学前の給食についてはどうでしょうか。知人の園では、管理栄養士と職員が協力して食育の推進に努力され、食材料についても吟味された質の高いものを使用しています。しかし、園の経営方針により食育の進め方に格差があるようです。

 未来を担う子どもたちのために、一食でも多く家族や仲間と食卓を囲む団らんを大切にしていきたいものです。そして、人に良いと書く「食」を「育む」力が、家庭や地域を元気にする源となるよう皆さんと『食育』を進めていきましょう。







(上毛新聞 2011年5月31日掲載)