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群馬ダイヤモンドペガサスチーフマネジャー  谷口 弘典(高崎市貝沢町)



【略歴】北海道出身。札幌西高、高崎経済大を卒業後、米独立リーグで捕手としてプレー。NPB千葉ロッテマリーンズのチームスタッフを経て2008年から現職。



球界とIT



◎共存してビジネス探る




 昨年のプロ野球日本シリーズ、セントラルリーグの覇者・中日ドラゴンズとパシフィックリーグの覇者・千葉ロッテマリーンズの対決が、地上波テレビで放映されなかったことに衝撃を受けた。野球少年だった私にとって、プロ野球の日本シリーズといえばテレビ放映を見ることはもちろん、次の日の学校での話題も野球が主であった。

 中学校の担任で野球部の顧問の先生の話題になると、今でも私の母親が語り草にしていることがある。中間テストを終え帰宅した私に「弘典君いますか」と電話があった。その電話を受けた母親が今でも笑って話す。先生から電話があったので、何事かと思ったそうだ。デーゲームで行われていた日本シリーズ「西武対巨人、どっちが勝った?」という内容だった。それだけ皆が注目し、楽しみにしていた。先生との共通の話題も野球だ。 その日本シリーズが地上波テレビ放送から消えた。プロ野球史上初のことである。日本の経済状況により、テレビスポンサーがつかないからだろうか。プロ野球人気の陰りだろうか。それともメディアの在り方がグローバルに変わっているからだろうか。スポーツ観戦の醍醐味といえば、その場の臨場感であり、生身の人間によるダイナミックさであり、人によっては、繊細さや華麗さであろう。その他、見方はそれぞれだ。それは今も昔も変わっていない。実際、地上波放送がなくなっても、チケットは完売している状況だ。

 今から15年ほど前、私が学生の時、携帯電話の普及率といえば10%ぐらいであった。学生が持っていたのは、PHSもしくはポケベルであった。15年ほど前に携帯電話が今のように広がっている姿をどれほどの人が予想していただろうか。今や携帯電話もただ通話をするだけのツールではない。携帯電話の各メーカーが徐々にスマートフォンに移行しているように、インターネットでいつでもどこでも情報を取れるようになっている。

 これからは新たに出現したインターネットという巨大産業とうまく共存し、スポーツ界の発展に貢献していかなければならない。プロ野球チームの変遷でもわかるように、鉄道・映画・新聞・百貨店・物販・ITと歴史をたどる。ITの出現により、各業界の広告の出し方が変わってきているのだ。

 各業界同様、野球界もIT業界との共存が必須になってくる。もはや競合する相手ではない。チケット収入以外のインターネット広告、通販による物販、IT特有の双方向コミュニケーションを使った選手との対話―。この15年間の目まぐるしい世界経済の変化に直面し、いかに先見の明を持ち、ビジネスに結び付けるか、痛感している。15年後が楽しみだ。







(上毛新聞 2011年6月1日掲載)