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藤岡市鬼石商工会事務局長  秋山 博(藤岡市岡之郷)



【略歴】日大法学部卒。1978年に中里村商工会に就職した後、県商工会連合会と赤城村商工会での勤務を経て2001年4月から現職。行政書士などの資格も持つ。


大失敗を避けるには



◎早期に誤り見つけ改善




 私たちは毎日生活する上で、失敗や誤謬(ごびゅう)をおかします。それは人間にとってつきものです。失敗や誤謬をおかさない人間などいません。なぜなら、私たちは毎日、次から次へと新しい問題にぶつかり、その解決を迫られるからです。ある時はうまくいったが、ある時は失敗したと。これが現実です。

 私なんぞ毎日の生活や仕事の上でよく失敗や誤謬をおかします。ですが、一つだけ心掛けていることがあります。それは取り返しのつかない失敗や大きな誤謬はしないと自分に言い聞かせていることです。賢い人間とは決して失敗を起こさないのではなく、事が小さいうちに誤りを見つけ、容易に改めることのできる人間です。取り返しのつかない大きな失敗は誰しもしたくないものです。

 ところが今回の福島第1原発の事故は、日本人にとって取り返しのつかない大きな失敗をしてしまいました。第1号炉の炉心溶融に始まり、2カ月以上もたつというのに、いまだ収束に向かっていません。このまま収束に至らず6カ月先、1年先となってしまったら、大量の放射性物質が広範囲にばらまかれることになります。どうしてこうまで取り返しのつかない事故になってしまったのか私なりに考えてみました。

 それは、原発を設計製造した一流といわれる学者や大企業の技術者の認識に、絶対に誤謬はないという慢心と地震や津波に襲われても絶対に大丈夫という「安全神話」があったのではないでしょうか。結果的に政府や東電、携わった学者や技術者らの先入観やおごりとなって、リスク回避や安全対策を怠らせ、ましてや原子炉の停廃止など思いも寄らずといった思考になってしまったのではないでしょうか。

 それに、福島第1原発は初の稼働から40年になります。一般的には原発の耐用年数は30年と言われていますので、40年持たせたことは、既に老朽原発であります。この間に小さな事故や故障が何度も起きていたであろうに、そういう小さな前兆をとらえる賢さがあれば今日のような大事故は起きなかったかもしれません。

 そして、東電が会社である限り、そこに資本の論理が働き、老朽原発にむち打ちながら40年も稼がせた結果が今日の大被害をもたらしたと私は思っています。10年前に廃炉にしていたらと、今となっては誰しも途方にくれる毎日です。

 しかし、くよくよしていてもらちが明きません。「コンクリートから人へ」という政府なら人命と相いれない放射能と原発は一刻も早く押さえ込んで廃止してほしいものです。日本で生活していくしか術のない私たちは、放射能から逃れようもなく、今のところ正しい知識と知恵で被ばくをかわすしかありません。






(上毛新聞 2011年6月3日掲載)