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織物製造・販売  山岸 美恵(館林市仲町)



【略歴】1974年に結婚し、家業(山岸織物)の手伝いに入る。25年ほど前から二次製品のデザイン、製作を始め、前掛けやブラウス、シャツなど約20種類を手掛ける。


「絆」の大切さ



◎支えられて勇気もらう




 館林では、3月から「桜祭り」、4月には「つつじ祭り」、6月は「しょうぶ祭り」、そして秋の「彼岸花祭り」と四季折々の花祭りがあります。特に、4月から5月にかけての「つつじ祭り」のにぎわいと花の見事さは格別です。

 そのつつじが岡公園の一角に、「館林紬」の店を出して30年近くになりますが、今年ほど人との『絆』を強く感じた年はありませんでした。

 3月11日に発生した巨大地震と大津波、そして福島第1原発の放射線等による東日本大震災の甚大な被災のショックで、行楽や旅行に出かける気持ちが薄れるのは、誰しも同じではないでしょうか。しかし、ゴールデンウイークに入ってからは、自粛ムードも薄れてきたのか「つつじ祭り」にも行楽客が大勢訪れました。

 私どもの店にも観光客が立ち寄ってくれました。その中には、毎年4月29日の早朝に必ず来てくださる太田市尾島のご夫妻がいます。また、遠方から毎年来てくださる人、2、3年に一度来てくださる人、以前買い求めた「シャツ」や「ブラウス」を着て来店してくださる人もいます。細やかな気遣いを感じ、「館林紬」を通して『絆』が結ばれ、このうえなくうれしく思います。

 同時に、再び製品を買ってくださることで、私の自信につながるとともに、お客さまが求めてくれるような新しい生地やデザインを創作してみようという励みにもなります。

 また、新しい出会いもありました。旧境町(現伊勢崎市)の「蚕種」を扱っている方です。「蚕種」とはどんなものか非常に興味があり、一度は訪ねてみたいと思っています。

 今年がいつもの年と違うのは、福島から避難してきた人の話でした。

 「肉親を亡くした人、家を失った人、自分よりつらい思いをしている人が周りにたくさんいて、愚痴も言えない。泣くこともできない。時にはお互いが感情的になってしまうこともある。我慢もいつまでも続くかと思うとつらい。見ず知らずの他人に愚痴を聞いてもらい、思いっきり泣いてみたい」

 先の見えないそんな話を聞くと、言葉も出ませんでした。

 東日本大震災以降、『絆』という言葉をよく耳にしますが、世の中の人が一番必要としていることではないでしょうか。私が元気に仕事をやれるのも、多くの人々に支えられて、勇気をもらってきたからだと思います。

 人を温かく包み込んでくれるような良い意味での“おせっかいおばさん”が、もっともっと増えてくれれば、世の中が明るくなるし、悲しみや苦しみが少しでも慰められるのではないでしょうか。







(上毛新聞 2011年6月5日掲載)