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医師  佐藤 和子(高崎市片岡町)



【略歴】桐生市生まれ。桐生女高、福島県立医科大卒。麻酔学や医化学を研究し兵庫県立尼崎病院心臓センター、国立循環器病センター勤務。元大塚製薬健康推進本部長。


子どもの就寝時刻



◎早めて朝食しっかりと




 成長期の子どもにとって、お手本となる大人が周囲に存在することは大変心強いことである。子ども時代をふり返ると、私にはいつもそのような人々がいた。いつかそんな大人の一人になりたいと強く願っていたことを思い出す。今、医者になり、予防医学の道をつくっている最中なので、“教育の力”の重要さを痛感する。子どもたちに本当に役立つ核心をつくような事柄を伝えたいと強く願っている。そこで今回は就寝時刻をとり上げたい。

 「時間がない」と朝食を抜いたり、朝食が悪すぎる(重要な栄養素の摂取不足)子どもは多い。アレルギー疾患、いじめ、集中力の低下などが生じるのも当然である。これらは規則正しい食生活を身につければすべて解決される。その鍵は就寝時刻にある。就寝時刻を早めれば、善の循環が始まる。

 ある中学校の講演会で出会った中学2年の少女から「友達を失いたくないが、成績が下がってしまい悩んでいる。どうしたら良いか」と相談を受けた。聞くと、ひとりっ子で、中学生になった時、友達がほしくて声をかけたところ「条件は夜10時以降の指定したテレビ番組を見ること」と言われ、眠くても約束を守って見るようにした。しかし起床が遅くなり、朝食は食べられない。授業中も眠くて集中できず、次第に成績は上から中へと下がってしまったとのことであった。

 私はいつも「睡眠あっての食事であり、朝食が一番大事」と伝えているので、早寝して改善するよう促した。すると「小学生のころは朝5時には起きて勉強していたので、いつも満点が取れていた。そうすれば成績が上がることはわかっている。しかし、それによって友達を失うことになるのがつらい…」と言う。少女は将来の夢をしっかり持っていて、学力が上がらなければ、その実現は無理とわかっての相談であった。

 そこで私は、キップリング(詩人)の「100人目の友」という詩を話題にして語りかけた。99人の友はこちらの調子の良い時には寄ってくるが、悪くなると離れていってしまう。しかし100人目の友というのは、こちらが幸せな時には寄ってこないが、困っている時には、そっと側にきて励まし支えてくれる。これこそが真の友、本当の友である等々。

 少女はしばらく考えてから「わかりました。本当の友がほしいです」と言った。早寝早起きの生活に戻り、早朝学習を再開し、朝食をしっかりとるよう改めた結果、着実に学力は向上した。私はこのような事例を多数経験している。子どもの健全育成には、就寝時刻を具体的に示した方がよいと思う。小学生は夜7時半~8時、中学生は夜8時~8時半、高校生は夜8時半~9時に床につくよう私は指導している。皆さまはどうお考えでしょうか。








(上毛新聞 2011年6月6日掲載)