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学習塾経営  福田 一男(大泉町吉田)



【略歴】桐新潟大大学院修了。三洋電機で半導体開発に携わり、07年、県内公立校で初めて民間から登用され、昨春まで太田商高校長。著書に『コスモスは咲く、必ず咲く』。


学習指導要領の改訂



◎学力改善を優先課題に




 学習指導要領が改訂され悪名高かったゆとり教育から新課程への移行が小学校では今年度から既に始まり中学校では来年度から完全実施される。中学校に関していえば、ゆとり教育世代は授業時間が以前のいわゆる詰め込み教育世代より約20%減少した。さらに大きな問題は学習内容が約50%も削減されたことであろう。ゆとり教育世代の教科書を見ると数学であれば履修対象とならない発展問題や余計な遊びのページが多く中途半端だ。英語も会話中心となり文法などはそっちのけで地理に至っては内容が分散しており教科書の体をなしていない。

 ゆとり教育と言っても教科書がいい加減で授業時間が減少したのだから、落ちこぼれの生徒が大量に出ても不思議はない。中1数学最初の単元「正負の数」で約3分の1、次の「文字式」で約3分の1、つまり1学期が終了した時点で約3分の2が授業についていけなくなっているのが現状である。

 さらに部活動が追い打ちをかける。勉強は端に追いやられ部活動が過熱化し早朝、放課後そして土日の練習と、生徒や教員は「ゆとり教育」でくたくたとなっている。まともな宿題を出しても生徒はやって来ないので苦肉の策として自主勉といったくだらない宿題が出され、できる生徒の学力まで低下している。悪循環極まりない。部活動自体は有意義なのだがあくまでも学校教育の一環であり学業に優先されるものではない。外国では学校での部活動はなく、有能なアスリートは地域のクラブチームで腕を磨いているのが一般的である。

 群馬県では部活動の指針が中学校長会から出されており、(1)平日は日没を考慮し2時間以内(2)朝練習は希望者のみ(3)土日の練習は1回半日程度とし1日は休養日とする、といった素晴らしい内容である。ところが現状は定期考査直前の土日でも両日、部活動をしている学校が多い。今の中学生は普段、本当に勉強しない。その分、定期考査前くらいは勉強できるような環境づくりが必要であろう。

 また、同じ地区の中学校でも授業の進度が大きく異なったり、定期考査が1学期に1回そして2回の学校が混在していたり、定期考査日が大きく異なったりと統一性に欠ける。

 ここでお願いしたいのは、教育を統括する教育委員会には現場をよく見てもらい、学力向上を最優先して各中学校を指導してほしいのと同時に、部活動の過熱を防ぎ今回の指導要領改訂を良い機会ととらえ、学力改善活動に取り組んでほしいということである。ついでながら各家庭でも最低限の勉強時間確保や宿題チェックなど家庭教育の改善をお願いしたいものである。教育そして知力こそが資源のない日本の未来を創つくると信じての提言である。






(上毛新聞 2011年6月7日掲載)