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共愛学園前橋国際大・入試広報・進路センター長  岩田 雅明(前橋市昭和町)



【略歴】東京都立大法学部卒後、共愛学園に就職。共愛学園前橋国際大の立ち上げと改革に尽力し、その経験から大学選びや学校経営などの著書3冊を著した。



大学の情報公開



◎真摯な姿勢で信頼感を




 2010年6月、中央教育審議会の答申に基づく学校教育法施行規則の改正が行われ、11年4月から大学の情報公開が義務付けられた。義務付けられた項目は、大学の教育研究上の目的、教員の数や業績、入学者の受け入れ方針、入学者数、授業科目、授業の方法と内容、卒業者数、就職者数、就職状況などである。

 このようにあらためて情報公開が義務付けられた背景には、これまで大学が自己に不都合な情報については、きちんと公開してこなかったという事情があると思われる。大学のホームページやパンフレットを見ても、入学者数や具体的な就職状況が明示されているものはそう多くはない。

 私もかつて大学選びの本を書く際に、各大学の入学定員充足状況を調べたことがあったが、入学者や総学生数が発表されていない大学が少なからずあった。就職の例でいえば、当該年度の詳細な就職状況が明示されているケースはむしろ少なく、過去何年間かの主な就職先といった、曖昧な掲載の仕方が多く目につくのが実情となっている。

 しかし、これは考えてみるとおかしな話である。4年間で私立大学の場合であれば400万円以上の学費を支払う大学入学という高い買い物に対して、中身をきちんと明示せずに買わせるということがまかり通っていたわけである。正月の福袋でさえ、中身の明示や保証がないと売れないという時代においてである。

 このようなことが許容されていたのは、大学の入学定員に対して入学希望者が多かった売り手市場時代の慣例と、大学卒業者が少なく、大学卒業者には社会において一定の優先的待遇が与えられていた、かつての良き時代の認識の残骸が大学側、受験者側の双方に残っているせいであろう。

 ところが10年度の学校基本調査が示す通り大学生の就職率は60・8%で、就職も進学もできなかった学生が2割を超えている状況下では「大学であれば良し」ということはなく、就職支援体制、就職実績をきちんと見極めることが不可欠となってきている。

 私自身、長い間、大学広報に携わって感じることは、誠実さが最も大切だということである。その大学の教育理念をどのように授業等で具現化しているのか、そしてその成果としての進学、就職状況はどのようになっているのかということを、きちんと関係者に知らせることである。その上で、不十分な分野を充実させていく努力をすることである。明らかにすることで、改善は進むと思う。

 このような真摯(しんし)な姿勢こそが受験生や保護者、教員というステークホルダーに対して、信頼感を与えることになるのではないだろうか。大学でも企業でも『真・善・美』が肝心である。








(上毛新聞 2011年6月8日掲載)