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前・神流町恐竜センター学芸員  佐藤 和久(神流町神ケ原)



【略歴】埼玉県出身。千葉大卒。モンゴルでの化石発掘を機に不動産会社を退職。1999年から2011年3月まで恐竜センターに在籍。03年には、学芸員の資格を取得。


化石や地層の教材



◎DVD作り授業で活用




 2000年の出前講座以降も、中里村(当時)の小中学校などで、化石発掘体験や地層の話などを総合的な学習の時間や理科の授業で行っていた。そんな中、05年ごろ、万場小学校の理科の先生から次のような相談を受けた。

 神流町は、瀬林の漣れん痕こんや恐竜の足跡を授業中に見たり、化石発掘ができたりと生徒にとってすばらしい環境だ。しかし、理科を教える私たちのほとんどが地層や化石について専門外であるため、この環境を生かす授業のやり方が分からない。また、地学専攻の先生は少なく、今後新しい先生が赴任されても状況は同じだと思う。もし可能であれば、この地域の地層や化石についてわかりやすい教材を作ってほしい―ということだった。

 しばらくして、独立行政法人科学技術振興機構(以下、JSTという)が「地域博物館連携支援事業」(当時)を行っていることを思い出した。地域の科学館と学校等が連携協力し、共同企画する「野外観察」「出前授業」といった活動を支援する事業である。そこで先生と打ち合わせをし、「出前講座」でやったことをもとに、神流町産の恐竜・サメの歯や新種のエビ・カニ化石などのほか、神流町の地質がどのようにできたのかを、アニメーションを使って説明するDVDを開発することにした。

 そして最終的に、神流町の大半を占める「秩父帯」の成り立ち、瀬林の漣痕などを含む恐竜時代の山中「地溝帯」に関する説明、化石発掘、化石のクリーニングそしてレプリカ作成に関する実演など計五つの構成とし、06年5月にJSTの支援を受けることとなった。

 ただし、今回のDVDは授業で使うことを前提とするため、本来であれば一つ一つの構成について、1時限かけて説明する内容であるにもかかわらず、一つが3~5分で、全体で20分以内にする必要があった。もちろん、内容などに間違いがないか神流町の地質などを研究している大学や博物館の先生方に見てもらったり、小学生でもわかる表現であるか恐竜センターのスタッフに見てもらったりした。

 また、最初の学校が9月初めに行うことになったため、夏休み期間中は一般および団体の化石発掘体験などをしながら、実演の撮影や構成の確認を進め、なんとか8月末に無事完成した。

 そして、開発に立ち会った万場小学校の先生からの提案で、理科教員部会や教育委員会などを通して、県内の小中学校にこのDVDを約100枚配布することとなった。このDVDは教育現場からの提案がなければできず、さらに大学や博物館など多くの方のご協力により完成したものである。現場の声に耳を傾けること、周囲の協力が大切であると実感した。







(上毛新聞 2011年6月10日掲載)