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片品村文化協会長  千明 政夫(片品村摺渕)



【略歴】片品村生まれ。旧制沼田中学卒業。農業の傍ら、約30年間PTAとして村の教育に携わり、小中高校のPTA新聞の発刊に尽力。2007年から村文化協会長。


子供たちに俳句を



◎情緒の成長に役立てて




「ねえ、ねえ早く見て」。私の服の袖を引っ張って、催促をする低学年の生徒。私は一人の生徒の俳句を見ていて、「この俳句には同じ言葉が二つある、この一つを、その時自分はどう思ったというような言葉に変えてみたら」などと話して、次の生徒に目を移します。私が何を話すか、目を輝かせている児童。本当にかわいい。片品村立武尊根小学校。今年は全学年で15人の子供たちです。

 8年前、“俳句・短歌を学ぼう”という国語の単元で俳句のお話をしたことが縁で、毎月1回、1時限目に“文章教室”と名付けて、俳句や詩、文章などその時々でテーマを決めて講座を開いてきました。

 毎年、学年初めに児童に話すことは、「人は自分の気持ちを人に伝えるためにお話をします。その時、頭の中で脳が言葉を組み立てて、口に伝え、口が動いてお話をします、この言葉の組み立ての勉強として、俳句や詩を作ることが、とても役に立つのです、皆さんは今は学校の勉強、将来は受験、社会に出ていく、こうした時の勉強のつもりで言葉の組み立ての力を付けましょう」。要約すると、こんな話から入っていきます。

 子供たちはもう指を折ったりして作句を始めます。

 教頭や担任の各先生が、生徒の相談の相手をしてくれますが、校長先生も時折、生徒にお話をしてくれます。

 こうしてできた俳句を、この時間の終わりに、全員が一人一人、自分の作品を、3句ずつ大きな声で発表します。私はこうしたことで、小規模校の子供たちが、人の前で堂々と発表をするという勇気をつけてほしいと思っています。

 児童の作品を見ながら、言葉を変えることはせず、自分で考えるようにさせます、子供たちは、言葉を削ることは平気ですが、言葉を足したり、変えたりすると、それはもう自分の作品ではなく、直した人の作品と考えてしまうのです。

 こうして5年ほど前からは俳句を中心にして、できた俳句を生徒が自筆して、教頭先生が上毛新聞の、ジュニア俳壇に投稿してくれます。入選作品は、先生が幅12センチ、長さ36センチの白いビニール盤に複写印刷をして校舎の廊下に展示して頂いています。総計で62句になりました。

 私もこうして子供たちとふれあうことが、人生の大きな生きがいになっていて、子供たちの知識や情緒の成長に少しでも役立つことができれば、本当にありがたいと思っています。

 私が村の句会の仲間入りしたのが、19歳の時でした。それが長い歳月をへて今も続いていて、その中で私が子供たちの自由でみずみずしい発想から得ることの多いことも、本当に楽しい人生の一こまになっています。







(上毛新聞 2011年6月15日掲載)