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藤岡北高教諭  中尾 徹也(藤岡市牛田)



【略歴】藤岡市生まれ。東京農業大農学部卒。1995年、県の農業教員として採用され、伊勢崎興陽高に赴任。その後、富岡実業高を経て、昨年から現職。


農業クラブの活動



◎特産物研究や地域交流




 農業高校生は農業クラブ(日本学校農業クラブ連盟)員として、日々の農業学習での知識や技術を生かしたさまざまな活動に取り組んでいる。

 日本学校農業クラブ連盟とは、全国の農業高校生による科学性、社会性、指導性を高めることを目標とした組織である。各種競技や研究活動を通して、問題解決能力や表現力、コミュニケーション能力を身に付け、将来につながる自信と生きる力を培っている。

 群馬県の農業高校でも、さまざまな活動に意欲的に取り組み、大きな成果を得ている。例えば、勢多農林高校では、群馬伝統食材「大白ダイズ」の保存と普及に関する研究に取り組み、地域にある貴重な遺伝資源を調べ、品種改良や普及活動、保存技術を継続的に研究している。この研究は、全国学芸科学コンクールにおいて、内閣総理大臣賞を受賞する高い評価を獲得している。さらに、この研究を行っている植物バイオ研究部では、赤城山のサクラソウの保護活動にも取り組み、自生地の環境整備や商品開発による盗掘防止を図るなど幅広い研究活動を行っている。

 また、富岡実業高校では、「マルベリー・ルネッサンス~天然酵母で桑の実資源化をめざして~」「世界遺産への道~広がる地域活動~」をテーマとして、富岡製糸場の世界遺産登録をめざす地域とのさまざまな交流活動に参加し、地域活性化に貢献している。

 このような農業クラブ活動では、テーマ決定から課題の設定、実施計画、調査・研究、まとめを通して、反省点や問題点を見いだし発展させるプロジェクト学習を実践している。この学習により生徒は、問題への対処や解決、判断力、自分の考えを伝える説明力などを実体験から学んでいる。また、群馬県における農業クラブのさまざまな研究活動や交流活動は、地域の特産物や郷土文化に密着した積極的な教育活動である。農業は地域の環境に密接に関係した産業であるため、その地域にある農業高校にとって、地元の支援や信頼は欠かすことのできない重要な要素である。

 これから農業高校は、専門的な知識や技術を最大限に活用した地域への還元活動を実施することにより、その地域になくてはならない高校となるはずである。そのためには、農業クラブの目標である科学性、社会性、指導性を重視したさまざまな教育活動を実践し、地域に根ざした特色ある農業高校をめざしていかなくてはならない。

 2015年度には、農業高校生の甲子園といわれる「日本学校農業クラブ全国大会」が群馬県で開催される。全国から5千人を超える農業高校生が集結し、競技や各種発表会を行う。群馬県も地域に根ざした農業クラブ活動で活躍するであろう。






(上毛新聞 2011年6月16日掲載)