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黒沢病院附属ヘルスパーククリニック院長・画像センター長
                            佐藤 裕一
(高崎市矢中町)



【略歴】新潟県柏崎市生まれ。日本大医学部卒。同大医学部内科学教授を務めた後、2009年から現職。


慢性腎臓病とは



◎生活習慣の改善で予防




 最近、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease=CKD)という病気の概念が注目されています。CKDとは、腎機能低下が慢性的に続く状態で、放置したままにしておくと、腎不全となって、人工透析や腎移植が必要になることもあります。したがって、いわゆる“隠れ腎臓病”のうちに、早期発見、早期治療することが大切です。また、腎不全に至らなくても、心臓病や脳卒中などの心血管疾患にもなりやすいことが明らかになっており、CKDを治療し、心血管疾患を予防することが重要です。

 CKDは生活習慣病(高血圧、糖尿病など)や、メタボリックシンドロームとの関連も深く、誰もがかかる可能性のある病気です。しかも初期には自覚症状がまったくありませんから、注意が必要です。近年人間ドックでもCKDの早期発見のために、糸球体濾過(ろか)率(eGFR)を算出している施設が増えてきました。健常人のeGFR値は100ml/分/●(1分間に腎臓が濾過する血液の量、この値が低いほど腎臓の働きが悪い)ですが、eGFR値が90ml/分/●以下をCKDといいます。また尿検査上たんぱく尿が陽性である場合もCKDといっていいでしょう。CKDは、その重症度(eGFR値)に応じて、ステージ1からステージ5の5段階に分けられています。そのうちステージ3未満の軽度のCKD(eGFR30ml/分/●以上、90ml/分/●未満)では、むくみや倦怠(けんたい)感などの症状はありません。しかし、10年間で脳梗塞症や心筋梗塞症などの動脈硬化を引き起こす可能性は、男性で健常人の3倍、女性で2倍と多いことが証明されています。しかし、医療現場のCKDに対する認識は決して高くはありません。 CKDは確かに腎機能の異常ですが、その原因として高血圧や糖尿病などの生活習慣病が存在することから、生活習慣の改善が予防の第一歩となります。つまり、禁煙、肥満の改善、食事療法、適度な運動がメタボリックシンドロームと同じように必要です。また、血圧、血糖値、LDLコレステロールなどの数値が異常な場合は、医師による管理が必要となります。とくに高血圧がある場合は、血圧の管理は重要です。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2004」では、収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧90mmHg未満を降圧の目標値としていますが、CKDを合併した高血圧では心血管リスクがより高まるため、130/80mmHg未満が降圧目標値とされています。

 最近ではeGFRを検査項目のひとつとして組み入れている病院が多いので、ご自分のeGFRを把握し、生活習慣の改善や、必要ならば主治医のサポートをお受けすることをおすすめします。


                             編注:●は立方メートルのmがmmになる 





(上毛新聞 2011年6月20日掲載)