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群馬詩人クラブ代表幹事  樋口 武二(富岡市田篠)



【略歴】ミニコミの編集・発行に携わる。群馬詩人クラブの代表幹事、コミュニティマガジン「い」編集発行。2005年に自然保護活動で「群馬銀行環境財団賞」を受賞。


発表媒体の選択



◎内容そのもので勝負を




 戦後の人たちが、どういった形で詩の活動をしていたのか、あるいは、どういう気持ちで詩を書いていたのかという、しごく当たり前の疑問が以前からあった。戦後の活動の歴史が、そのまま現在の群馬地域の文学活動に色濃く影響を与え続けている現実は、非常に興味のあるところで、単なる懐古譚に終わらぬ仕事にしたいというのが、ひとつの目標として存在した。そして、前橋文学館の応援を得て始めたのが、「群馬戦後詩の検証」であった。何回かの講演会と、事前の調査、打ち合わせなどで、興味深いことも幾つか出てきたし、それらの取り扱いについては、今後ということにもなるのだが、息の長い仕事になりそうである。

 始めてわかったことがある。もの書きといわれる人間には、発表(記録)媒体を書籍で行うというのが常識になっていて、それ以外の方法は、あまり選ばない、というか思い付かない傾向がある。文学とはいえ、現代においては、ビジュアル化を目指す動きも顕著で、戦後の活動と比較した場合に、発表媒体の違いも含めてだが、決定的な相違点ではないのかと、そんな感想をもっているのだ。

 こういう書き方をすれば、書籍以外に何がある、という反論を受けそうだが、現実に私たちは「群馬戦後詩の検証」で本という形式を選ばなかった。正確に言えば、私たちのクラブはあまり資金もないから、選ぶことができなかったというところが真相でもある。あれこれあって考えついたのが記録媒体として、DVDという選択であった。制作時に諸々の問題は存在したが、費用的には格安である。幸いなことに、クラブにはHさんという、DVD制作に詳しい方がおり、全面的な支援をされているので、内容的にもかなりのものができあがった。

 県内においても、DVDで詩集など制作した方もおられるようだが、まだまだ少数である。詩集に限らず言えるのは、自費出版物の発行費の高さである。有名出版社からの発行を考えると人生に何冊の本を出せるかという話になる。県内で本の出版を手がけている小さな版元は幾つかあるが、その経営は必ずしも良いとは言えないようだ。前述のように、DVD制作という思いきった方法もあるが、それ以前に高価な本作りをあらためて、簡易な体裁の本を作る努力をしてみたいものだ。安い装丁の詩集(本)は読まれない、相手にされないといった考え方もあるようだが、ここでは内容そのもので勝負したいという気概くらいはもちたいものだと記しておこう。そこにこそ、ものを書く人間としての誇りがあるような気がしてならないのである。商業という視点を持たぬ発言だが、文学という世界では、それも許されて良いのではないかと思うのだ。







(上毛新聞 2011年6月21日掲載)