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声楽家・ヒプノセラピスト  永井 隆子(太田市寺井町)



【略歴】武蔵野音大声楽科卒。NHKカルチャー前橋講師。演奏活動と合唱指導の傍ら、ライフワークとして「インナーチャイルドの癒やし」、「前世セラピー」に取り組む。


癒やしのヒプノ



◎本来の自分を見つめる




 今回は「ヒプノセラピー」について書かせていただきます。

 聞き慣れない名称ではありますが、簡単に言うと、セラピストの誘導で脳をα波の状態に導き、日常の意識(顕在意識)では感じ取ることが難しい自分の“根っこ”の部分にアクセスするという癒やしのワークのことです。

 私達人間は他の動物とは違って、母親のおなかから出てこの世に誕生した瞬間から、「~さんちの○○ちゃん」になり、長男、次男、あるいは三女、四女、または一人っ子などという風に特定され、さらには、その成長の過程で「~ができる人」「~ができない人」「~さんの奥さん」「最近の若者」「お年寄り」というような、社会の中での自分の位置までも特定されて、知らず知らずのうちにそれを受け入れ、“その位置の人”を演じてしまっている気がします。

 前にも書かせていただきましたが、この位置付けにより、どれだけ多くの人が本当の自分を忘れてしまっていることでしょう。

 ヒプノセラピーはその本来の自分を思い出すがごとく、胎児期や幼児期に意識をフォーカスします。

 胎児期に戻ると、お母さんのおなかの中からまわりの様子を感じ取ることができるので、胎内の小さな命に対する母の思いを知り、感謝の気持ちがあふれたり、赤ん坊でありながら母の体を気遣ったりという愛の体験をする人も少なくありません。

 幼児期は、過去に両親などから聞いていた自分の幼いころの様子や出来事が浮かんだり、忘れていた記憶がよみがえったりするのですが、α波になっていますから、かなり細やかな感情にまで意識がフォーカスして「こんなにもうれしい出来事だったんだ」とか「こんなに悲しかったんだ」などと、あらためて当時の自分の感情を体験することになります。

 ほとんどの場合、実際に体験していた感情よりもさらに強い喜びや悲しみの感情がこみあげるようです。

 うれしかった出来事をより強く体験し直すと、感謝の気持ちにあふれていた自分に再会でき、悲しかった出来事をより強く体験し直すと「よく頑張ったね、もう大丈夫!」と、自分にエールを送ることができます。
 自分の感情と少しずつ向き合って、本来の自分を思い出す―これがヒプノセラピーです。

 自作の「龍の玲(たま)」という曲には、ヒプノ効果を織り込んでいます。音楽を通してヒプノセラピーを実践していけたら、とも考えている今日このごろです。







(上毛新聞 2011年6月23日掲載)