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                    柴田 直美(横浜市)



【略歴】横浜市出身。南山短期大卒。元ぐんまちゃん家店長。日本経営協会などでマナー研修、語学研修の講師として指導。専門分野はCS(お客さま満足度)向上。



DCを迎えるにあたり



◎お客さまの目線で会話




 新幹線が高崎駅に到着するまでの間、しばし懐かしい思いに浸る。ぐんまちゃん家の店長時代のさまざまな思いがよみがえるのである。

 店長の任期が終了したにもかかわらず、月1回は群馬県の団体の接遇研修に携わらせていただいている。7月1日、デスティネーションキャンペーン(DC)が始まるからだ。

 多くのお客さまに、群馬県の素晴らしさを体験していただくこと。そして一人でも多くのお客さまに、リピーターになっていただくこと。これが、おもてなしをする側の最大の目的である。

 研修では、実に多くの生徒さんと出会う。ある女性の生徒さんは、とてもシャイな性格で、お客さまにご自身の作品をうまく説明できない。男性の生徒さんは、職人気質が出てしまい、ささいなことでお客さまと口論になったことがあり、それがトラウマになっているという。

 研修でいつも感じるのは、みなさん大変まじめで努力家であること。ご自身の仕事への自信に満ちあふれ、生き生きとしている。どうかその思いを、素直にお客さまに披露していただきたい。

 ただ、一点だけお願いしたいことがある。プロとしてのこだわりを一方的に伝えるのではなく、お客さまの目線で会話をしていただきたい。接客で最も重要なことは、お客さまとの間でコミュニケーションが成立することである。一方的な説明ではコミュニケーションは成立しない。こだわりを説明するのは大切であるが、お客さまが何を知りたいのかを把握することが先決である。

 もちろん、普段お客さまと接する機会が少ない方にとって、お客さまのニーズを把握することは決して容易なことではない。しかし、ご自身が消費者の立場になったときのことを思い出していただきたい。気持ちよく商品を購入し、あるいはサービスを利用した経験があるはずである。その時、どんな会話をしたのか、そこにヒントが隠されている。

 デスティネーションキャンペーンは、群馬県の産業を担う方々にとって千載一遇のチャンスである。初めはうまく接客できないかもしれない。しかし、人間は失敗から学ぶ動物であることを忘れてはならない。

 繰り返すが、お客さまの目線に立ってコミュニケーションを成立させ、ご自身のこだわりを素直に披露していただきたい。それが、デスティネーションキャンペーンを迎えるにあたり、私がお伝えしたいことである。どうか、一人でも多くのお客さまに「もう一度、あの人に会いたい」と思っていただけますように。







(上毛新聞 2011年6月24日掲載)