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生花店 有花園専務取締役  亀田 慎也(高崎市上和田町)



【略歴】高崎高、早稲田大教育学部卒。1998年から家業の生花店で働き、高崎青年会議所の活動にも携わる。高崎田町屋台通りを応援する「旦那(だんな)衆の会」代表。


地域の生い立ち学ぼう



◎人間性に奥行きと深み




 高崎市立中央小学校の校庭東側に古い石塔が立っている。67歳になる父に聞いたが、父が小学生のころにはすでにあって、いわれはわからないとのこと。高崎市史に詳しい親戚筋に尋ねると「昭和10年代、紀元2600年(昭和15年=1940年)を記念して建てられた。全国から集められた石が土台に埋め込まれている。何度か取り壊す動きがあったが、反対があり今に至る」と教えてくれた。さらに、当時のことを考えれば、日本の領土であった朝鮮半島の石も含まれているかもしれないとのことだった。また、今年は内村鑑三の生誕150年にあたる。内村鑑三居宅跡の碑が高崎市柳川町にあることもあまり知られていない。国内外から崇敬を集める思想家ゆかりの地としては少々残念でもある。

 中央小学校は高崎城下のほぼ全域が校区となっている。したがって、寺社仏閣にはじまり江戸・明治・大正をしのぶ面影がそこかしこに点在している。また、中山道・三国街道などの道、お堀や暗渠(きょ)となっている用水路等の水の流れ、かつての商都のにぎわいを彷彿(ほうふつ)させる蔵の数々など、歴史と現在が時空を超えてつながっていることを目の当たりにすることができる。古地図を広げ、今と見比べてみれば、自分が歴史の舞台に立っていることの高揚感を感じずにはいられない。

 ところが、小中学校ではこうしたことを積極的に授業に取り入れようとする意識はあまり感じ取れない。無論、すべての先生がこの地域の生まれというわけではないし、歴史に詳しい先生が常にいるわけでもないから難しいのもうなずける。しかし、見渡せば先の親戚のように、聞けば答えてくれる地域の先生がたくさんいることも事実である。

 自分が何者であるか、どんなルーツを持ってこの時代に生きているのか、命のつながりとそれをどう未来へ紡いでいくのか、人生の中で一度や二度は自分自身に問いかけることもあるだろう。その時自らが生まれ育った地域がどんな生い立ちで、どんな人々の息遣いの中で形作られたのか、手がかりがあるだけでその安心感は計り知れない。

 学習指導要領の改定で総合学習の時間は大幅に削られた。であっても、社会・国語・道徳などの時間をこうした地域教育に少しでも当てられないだろうか。「上毛かるた」を授業に取り入れるなどの工夫も考えられるし、教師が一方的に教えるだけでなく、一緒に楽しんで学べるようにも思える。どんな地域であれ、人が住み、行き交い、生活を営んだ、その人と人の間にある生々しい歴史を学ぶことで奥行きと深みのある人が育つのだろう。学校と地域が互いに連携しあう仕組みを考えてみたい。








(上毛新聞 2011年6月27日掲載)