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群馬大大学院工学研究科教授  鵜飼 恵三(桐生市相生町)



【略歴】宮崎県生まれ。東京工業大大学院修士課程修了。群馬大工学部建設工学科助教授などを経て1992年に同大教授。日本地すべり学会長。工学博士。


自然エネルギーの宝庫



◎開発と活用への施策を




 東日本大震災による福島第1原発事故をきっかけに、自然エネルギーを活用した発電の要望が高まっている。自然エネルギーとは、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱など、自然現象に由来して長期間枯渇しないエネルギーのことである。

 現在、国内の全発電量に対する自然エネルギーによる発電の割合は水力を除くと数%以下にすぎない。群馬県は自然エネルギーに大変恵まれており、開発の余地が大きい。ここでは、県内の水力、太陽光、地熱・地中熱について現状を説明する。

 群馬県の主要な水力発電所は、新潟と長野の県境沿いの山岳地に集中しており、多数のダムが建設され首都圏へ送電されている。しかしながら、これらの水力発電量を合計しても、群馬県内の総消費発電量の15%程度にすぎない。大きなダムを使った水力発電の適地はほぼ開拓されているため、最近は山間地の小水力を活用した発電に目が向けられており、発電所周辺地域の電力を賄うことを目的に実用化が模索されている。

 1年を通じて日照時間の長い群馬県は、太陽光発電も有望である。近年、その設置面積は急激に増加している。太陽光発電は、消費電力がピークになる夏季の晴天時の昼間に、最も効果を発揮するという特徴を持っている。発電設備の規模はピーク消費電力により決まるので、太陽光発電の活用は発電設備の軽減にも役立つという効果がある。これは社会的なコストの低減につながる。

 群馬県には火山や温泉が豊富にあり、重要な観光資源になっている。一般に火山や温泉地帯では、地下1000メートル以深に高温の熱水脈が存在し、それを地上にくみ上げて発電に利用することができる。これを地熱発電というが、県内に発電所は設置されていない。国内を見渡しても、小規模の地熱発電所が稼働しているだけで、地熱の豊富な潜在エネルギーを生かせていない。地熱発電は安全であり、その技術は確立しているので、今後積極的な開発が望まれる。

 一方、深さ100メートル以浅では、地盤の温度が年間を通してほぼ一定であることから、その性質を利用して空調設備の省エネに役立てようとする試みが成功を収めている。これを地中熱の利用と呼び、海外ではその利用技術が確立している。国内でもエアコンの50%近い節電効果が確認され、実用化が始まっている。

 自然エネルギーの開発と活用は社会の大きな流れである。豊富な自然エネルギーを有する群馬県は、それを一層推進するための思い切った施策と投資を検討していくべきと考える。







(上毛新聞 2011年6月29日掲載)