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アウトドア・ツアー会社「カッパCLUB」社長  小橋 研二(みなかみ町小仁田)



【略歴】岡山県生まれ。1996年、アウトドア・ツアー会社「カッパCLUB」設立。ラフティング・ツアーをはじめ、スポーツイベントの企画運営、開催を手掛ける。



雪国観光圏の試み



◎7市町村結ぶトレイル




 「観光地」という狭い地域の枠にとどまらず、「観光圏」という広域を単位として観光振興に取り組もうとする動きが活発になっています。市町村だけでなく都道府県の垣根も越えたつながりが生まれることで、現状なし得なかった観光事業の実施も可能になります。

 みなかみ町も、新潟県湯沢町、津南町、南魚沼市、魚沼市、十日町市、長野県栄村とともに3県7市町村で「雪国観光圏」として観光庁から広域観光圏認定され、活動を行っています。その中に、スノーカントリートレイル策定事業があります。これは、雪国観光圏7市町村をオフロード中心に1本の道で結ぼうという構想で、昨年度事業で青写真ができ上がりました。

 本年度は策定作業と、そのトレイルを利用したトレッキングなどのイベントが開催されます。トレイルの策定には、地元の方はもちろん、一般登山者にも参加していただき、多くの意見や情報を集めて1本の道をつなげたいと思っています。距離は300キロ程度を想定しており、日本を代表するロングトレイルが生まれることになります。

 かつては集落間を結んでいた道、マタギが通ったであろう道、戦国武将が踏んだ歴史のある道、棚田を望む素晴らしい景観の道を結んでいき、圏内にある観光地をつなぐ魅力的なルートにもなるのです。ジョンミューアトレイル、ツールドモンブランといった世界に名だたるトレイルのように、海外からも多くの人々が踏破を目指して訪れるような道になることを期待していますし、そのポテンシャルは十分にあると思っています。

 300キロのトレイルは一般の人が歩けば2週間程度かかります。つまりトレイル訪問者は、圏内各所で10泊以上滞在することになります。そして圏内の自然や文化、歴史、地域の人々の暮らしに触れ、その素晴らしさと魅力を知る機会になるでしょう。これこそ新しい着地型旅行商品です。

 われわれ準備委員会スタッフの思い付きから始まり、話を重ねる中で盛り上がり、どんどん壮大になってしまった構想も、ようやく実現が目前に見えてきました。完成の暁には、全長300キロのトレイルランニングイベントの開催も予定されています。山の上から里に下り、温泉街を通過し地元の人にもてなされ、地域全体が盛り上がる素敵なイベントになるはずです。

 何度も足を運んで踏破する人、連続20日で踏破するバックパッカー、ほんの3日間で踏破してしまう本格派トレイルランナー。誰もが思い思いに楽しみ、みんなでつなぐ1本の道。踏破者に渡される「完走証」を手に笑顔を見せる人々の顔を思い浮かべながら、地域をつなぎ、人をつなぐ道を策定すべく、今日もスタッフは山を駆けています。







(上毛新聞 2011年7月2日掲載)