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◎地学の知識も役に立つ 自然災害は人間と自然との接点で発生する。人間が自然と関わらなくて済むなら自然災害は避けられるが現実はそうはいかない。自然災害の対策やその減災に関連していくつか思うところがある。 一つ目は情報公開の問題である。災害対策には対策工事に代表されるハードな方法と、予測や避難システムの整備などのソフトな方法がある。中でも後者に関しては住民や市町村に対する災害情報の公開提供の仕方が問題になる。情報の提供にあたっては、専門用語はなるべく使わないで受け取る側がよく理解できる形で、その段階で明らかになったことと同時に、不明な点、またその時点での技術・学問の水準・限界を含めて示すことがとても重要と考える。住民が災害に対して、自主的に対応するための基本となるからである。東日本大震災関連の記者会見等ではもっとわかりやすさが必要だと思う。 二つ目は技術進歩に伴う人と自然の関係である。最近の天気予報を例にとれば、良く的中し、人はその恩恵を受けている。かつて予報技術が成熟していなかったころや、予報自体が行われていなかったころは、人々は経験的に次の日の天気を予想していた。「朝焼けは雨、夕焼けは晴れ」といった観天望気である。昔の人は自然と正面から向き合い、よく観察することで自然から危険な内容も含めていろいろな情報を教わっていた。理論や技術の発達は人の生活を便利にすることが多くなる半面、現代人は自然からのシグナルを自ら拒絶してしまっているかのようである。便利さの享受と引き替えに大切なものを失っているのかもしれない。それが無意識であるとしたら少し怖い。 三つ目は地学教育・普及の問題である。自然災害は生活を取り巻く身近な環境での出来事である。それらは、気象災害であったり、地震災害であったり、斜面崩壊などの土砂災害で、地学的環境下で発生することが多い。地学を理解することは自然やその災害を理解する上で大いに役に立つばかりでなく、知識が命を救うことさえあると思う。少なくても自然に興味を持つ大きなきっかけになる。その割にはわが国の地学教育は貧弱で中学生までは物理学・化学・生物学と同等に取り扱われているが高校生ではほとんど学習の機会がない。大学受験では役に立たないという間違った考えによって地学という教科が軽視されているのであろうか。残念でならない。 災害の回避や減災に際しては情報の伝え方や自然をありのままに見る能力や自然が語りかけるものを素直に感じる力がとても重要と考える。そのような観点から受験や評価といった世界とは全く別次元で、地学や環境問題の教育・普及が必要であると考えるが、いかがであろうか。 (上毛新聞 2011年7月6日掲載) |