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奈良ADHDの会ポップコーン教育相談員  西田 清(奈良県橿原市)



【略歴】東吾妻町矢倉出身。岩島中、渋川高、奈良学芸大卒。奈良県内の小学校、養護学校に勤務。奈良自閉症協会、奈良ADHDの会事務局長を経て現在教育相談員。


LDへの対応



◎早期に専門機関へ相談




 B君は現在、工場で生き生きと働いています。彼が小学4年生のときに、担任から「西田先生、B君はとても頭は良いのです。しかし、国語の漢字は読めますが筆順が覚えられません。また6画数以上の漢字は書くことができません。どうしたらよいでしょう」と、相談を受けました。

 そこで、集団知能検査のほか私が個人知能検査(WISC)を行い、保護者とも相談して児童相談所にも行きました。そしてLD(学習障害)の可能性が強いので、個別指導が必要だという結論になりました。5年生から私が特別支援学級で担任し、彼の弱点である漢字の書写や読解、作文、絵の表現、感情表現の仕方、友達との関係の持ち方などを2年間にわたって指導しました。

 その結果、学力も向上し、友達関係も良好になり、中学校は通常学級で、高校卒業後は専門学校で学び、現在は自立して家庭を築いています。

 LDは日本では人口の3%、アメリカでは人口の10%はいると報告されています。知的に遅れがないので、障害を理解してもらえず、子育ての失敗とか、本人の努力不足、わがままと誤解されがちです。

 LDの主な状態を簡単に記載します。思い当たる場合には、早急に専門医や専門機関に相談することをお勧めします。また、LDとADHD(注意欠如・多動性障害)を併せ持っている人がかなり多いので、適切な対応と取り組みが必要です。

 【1】読字障害について

 (1)一字一字の読みが覚えにくい(2)本を読むとき同じ行を読んだり、飛ばしたりする(3)よく似ている文字は、読み分けることができない。「さ」と「ち」、「く」と「へ」、「b」と「d」等(4)文章を読んで内容を理解するのが難しい(特に詩の感想や解釈)(5)おしゃべりだが話の内容がずれていく(6)質問されたことに、答えがずれたり、関係ないことを答える。

 【2】算数障害について

 (1)算数の理解が進まない。筆算の場合に桁がずれやすい(2)計算はできるのだが、応用問題の立式ができない(3)足し算やかけ算はできるが、逆の考え方の引き算、割り算が不得意な場合がある。

 【3】書写表出障害について

 (1)文字は読めるのだが、書写は苦手で、鏡文字を書く場合がある(2)漢字学習などでは、筆順が覚えにくい(3)絵の描写(人物等)の表現力が幼い場合が多い。この他に、興味にこだわりがある。不器用で体の動きがぎごちない。落ち着きがない等。

 早期に発見し、特長を伸ばす子育てや支援教育で、アンデルセンやアインシュタイン、トム・クルーズのように才能を発揮できます。次回は自閉症(アスペルガー含む)です。






(上毛新聞 2011年7月17日掲載)