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管理栄養士  小坂 桂子(高崎市中室田町)



【略歴】明和学園短大卒。病院、老人ホーム勤務を経て現在同短大非常勤講師。NPO法人群馬の食文化研究会理事。ぐんま女性会議で男女共同参画社会推進に取り組む。


被災者の栄養管理



◎食と健康守る支援を




 「優しく忍耐強い皆さんにこちらが励まされました」。栄養士会の仲間が東日本大震災被災地に伺い、支援させていただいたことについての報告会(高崎栄養士会研修会)での発言です。

 震災後、被災者の食生活調査のため、宮城県気仙沼市に日本栄養士会(以下、当会)の先遣隊が入りました。震災後1カ月後には、1日に2食分は提供されている避難所が増えましたが、内容はあまり変わらず菓子パンやおにぎりのみというケースが多かったようです。また、支給されても使えない食材もあったようです。例えば、アルファ化米(炊いたり蒸したりした後に乾燥させた米)のご飯は、かむ力・飲み込む力が衰えた高齢者には食べにくい場合が多かったようです。個別の問題として、糖尿病の方が配給された菓子パンを健康な人と同じように継続して食べていたら血糖値の管理が難しかったり、高血圧の方は塩分の過剰摂取が問題となってきます。

 国は先月、「避難所における食事提供に係る適切な栄養管理の実施について」の具体的な要項を出しました。当会は災害支援管理栄養士・栄養士の派遣要領に沿って継続して支援させていただいています。具体的には、巡回療養支援隊や災害医療支援チームに同行して、栄養状態の調査、アドバイスを実施。他には支援物資の整理と発送手配等のボランティアとして支援させていただいています。

 例えば炭水化物(おにぎり・パン等)に偏った食事が長い間続けばビタミンB1が不足し、“かっけ”になる恐れがでてきます。ビタミンB群は炭水化物(糖質)をエネルギーに変えるには欠かせない栄養素となります。そして、ビタミンやタンパク質ミネラルが不足した状態が続けば、免疫力や筋力の低下が懸念され体力が落ちてきます。高齢者の場合、そのような状況で寝たきりになるとじょくそう(床ずれ)がおきやすくなります。

 そこで、当会では「ビタミン強化米」をメーカーに安く提供していただき、被災者に届けさせていただきました。他にも多くの栄養食品等も当会において対価を支払い提供させていただいているところです。

 また、この時期になって気にかかるのが余った菓子パンやおにぎり等の食べ過ぎで太ったり、虫歯になったりする方が増えているそうです。野菜等が不足するなか、主食の量を減らしましょうとは言いにくいのですが、摂取エネルギーの調整も急がれます。

 物資の配分時点から、管理栄養士・栄養士がかかわって調整することで、避難所の格差を解消したり住民の栄養相談に応じたり、食と健康における支援活動を、微力ではありますが、当会においても続けてまいりたいと思います。






(上毛新聞 2011年7月28日掲載)