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織物製造・販売  山岸 美恵(館林市仲町)



【略歴】1974年に結婚し、家業(山岸織物)の手伝いに入る。25年ほど前から二次製品のデザイン、製作を始め、前掛けやブラウス、シャツなど約20種類を手掛ける。


館林紬の魅力



◎家族のため織った反物




 つつじが岡公園などで、館林紬(つむぎ)の反物や小物類を販売していますと、「紬って絹ではないのですか?」「紬ってどういう意味ですか?」などと聞かれます。あまりにも結城紬や大島紬が有名で、紬イコール絹織物とのイメージが強いからではないでしょうか。

 紬は真綿や繭から紡いだ糸で織った布で、館林紬は木綿紬であることを説明すると、皆さん理解してくださいます。

 木綿紬のよさは「夏涼しく冬暖かい」「肌にやさしい」「静電気が起きない」「汗の吸い取りが良い」「丈夫で洗濯に耐えられる」ということです。

 欠点としては「しわになりやすい」「縮みやすい」「白焼けしやすい」といえます。しかし、現在では、染料や整理(湯通し)等の工夫で、ずいぶん解消されてきております。

 そして、最大の特徴は唐桟縞(とうざんじま)です。別名「桟留縞(さんとめじま)」とも「奧縞」ともいわれ、東インドの東岸にあるセント・トーマスからマカオを経て運ばれてきたことから、桟留の名がついたといいます。三代将軍家光のころです。もともとは輸入品である桟留は、それが国産化されるようになると、輸入品と区別するために、“唐桟”の名がついたそうです。当時としては、ハイカラな縞木綿の織物だったわけです。(日本の伝統織物より)

 今でも各織元は、織り上がった反物の一部を台紙に張り、縞帳として残してあります。これらは、後の縞柄作りに大変参考になり、大切なものです。

 館林紬は一反の幅が36センチですが、現在では40センチ幅に織ったりします。昔の人と違い、身長が伸びたせいです。

 40センチ幅の中に糸が1300本入ります。1300本の糸を柄に合わせて本数を決め、計算し、色を染めます。その後、整経します。整経とは、縞柄に合わせ糸を1300本になるように整えていくことです。この時に縞帳が必要なのです。

 私の祖母の時代には、まだ家族のために反物を織っていた人もいたそうです。80歳くらいの人の中には、母親や親類の人に織ってもらい、今でも大事にしている人がたくさんいると思います。

 この時にもきっと家庭にある縞帳が役に立っていたのではないでしょうか。家族のために綿花を育て、紡いで織る紬の暖かさ、やさしさの原点は、その辺にあるのではないでしょうか。

 失われつつある大事な習慣を少しでも長く続けられるように、また、館林紬をいつまでも織っていられるように努力をし、残していけたらと思っております。






(上毛新聞 2011年8月2日掲載)