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ライフ・プランニング・センター「新老人の会」群馬支部事務局長
                              吉江 福子
(前橋市上小出町)



【略歴】旧吾妻町出身。渋川女高、昭和大薬学部卒。薬剤師。介護支援専門員。病院や福祉施設、調剤薬局に勤務し、「新老人の会」群馬支部事務局長として活動する。


お薬手帳



◎病克服へ意識を高めて




 群馬県のマスコット「ぐんまちゃん」をご存じでしょうか? ぐんまちゃんの一人が緑色の帽子と白い白衣、もう一人はピンクのリボンとピンクの白衣を着て仲良く並んだ絵が小さなノートにありました。その二人の上に「お薬手帳」と書かれたかわいらしい手帳は群馬県薬剤師会によって作られました。

 「お薬手帳」は患者さまのお薬の記録を一つにまとめていくものです。その手帳を見ると、お薬が重なっていること(薬の重複)や飲み合わせ、副作用歴の有無、どこの病院で受診したか―などがすぐに分かるので、とても便利な「健康手帳薬版」のようなものです。保険点数として、少しお金がかかりますが、患者さま全員に持っていただければ非常時にも役立つので関心をもってほしいと思っています。

 私は7月16、17、18日と出席した日本医療政策機構主催の「がん政策サミット2011」の意見交換の場で「お薬手帳を持ってほしい」と話しました。その時、私が驚いたのは参加者全員が大きくうなずかれたことでした。それはがん患者さまの病気に対する意識が高い表れだと感じました。

 このサミットは、国や地域でより良いがん対策を行っていただくために、がん患者、行政関係者、議員、医療関係者が一堂に集まって好事例を共有し合い、情報交換や議論をする場です。第2期がん対策推進計画の策定に向け、国のがん対策推進協議会委員の方々と患者が意見交換できる場を持てるのは新しい試みだと思いました。

 今回、群馬から患者関係者4人、医療関係者1人、県議2人、市議1人、県行政担当者1人が参加されました。私は公募で参加することができ、かつ、今までの活動の一部を好事例発表のコーナーで発表する機会もいただきました。研修内容は多岐にわたり、意見交換も活発に行われました。

 その中で、特に私が興味をもったのは大阪大学副学長、日本がん対策推進協議会会長の門田守人先生の「大きく変わるがん医療」でした。先生は講演の中で「教育」にふれ、「医療者教育」と「患者教育」の両方が大事だと言われました。このことは「新老人の会」群馬支部の「模擬患者養成」で目指している「医療コミュニケーションの向上」と共通するものです。 門田先生は医学生が「患者のベッドサイドへ行くこと」が重要だと言われました。その言葉は私の夫も医師として25年ほど前に良く言っていた言葉です。医療関係者が患者に寄り添い、患者も高い意識をもつことが、病を克服する上でいかに大切であるかを教えてくれた「がん政策サミット2011」であり「お薬手帳」でした。これらの経験は今後の支部活動の方向性を示すものでもあると思いました。






(上毛新聞 2011年8月14日掲載)