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プロデューサー・プランナーK&AssociatesInternational代表
                              川島 佳子
(東京都港区)



【略歴】館林市出身。立教大大学院修了。企画会社、財団職員などを経て現職。NPOちきゅう市民クラブ事務局長、県人会理事、ピッコロ・バイオリン研究会代表、ほか。


ラマダンに思う



◎忍耐学び人へ思いやり




 イスラム教徒が長期にわたり断食をするラマダンが、8月1日から始まった。日の出から日の入りまで食事も水も一切口にせず、お祈りをして静かに過ごすのだ。私が事務局長をしている特定非営利活動法人ちきゅう市民クラブの会長は、バングラデシュ出身の工学博士で、私も一度ラマダンを経験したことがある。

 この活動の前身は、1998年に神奈川県にオープンした地球市民かながわプラザにある。プランナー兼コンサルタントとして約5年間、この施設の建設企画に関わった。日本初のハンズオン体験型文化施設にしようと、アジアからの留学生と来館者、特にこどもとのコミュニケーションを通して、異文化を楽しみながら学ぶエデュテイメント・プログラムや手法を提案した。開館後、この事業は好評を博し、学校からの依頼が増えたのをきっかけに事業化しNPO法人化した。

 アジアを中心に、特に9・11以降は、意識して努力しないと情報が入りにくい中東、イスラム諸国の異文化理解及び交流に力を入れている。本来のイスラム教は平和と自然を大事にし、両親や年長者を敬うことなどを説いている。ジハードは聖戦と訳されているが、自分の努力目標のようなものだ。次代を担うこどもたちに、多様な文化や価値を知る楽しさを学んでほしいと、小学校等の授業時間にワークショップを提供している。イランやトルコ、サウジアラビアからの大学院を修了した元留学生が先生となり、学年に応じてさまざまな国際理解プログラムを展開している。時には料理教室、コンサート、ダンスのワークショップなども行っている。一方、家族で同じテーマを話題にしてもらえるよう、父母や一般を対象としたプログラムも企画している。

 人気のシリーズは、大使夫人の講演と交流パーティーだ。イラン大使夫人のバハレ・アブドゥラヒヤン(アラグチ)さんは「新しいシルクロード」と題し、ササン朝ペルシャからの両国の交流の歴史を紹介してくれた。1880年、天皇陛下の特使として最初にイランに赴任した吉田正春の旅行記には、菊がイランでも王制のシンボルであることを知り驚いたことなどが記されている。

 エジプト大使夫人、ダリア・アブデルナーセルさんの講演は「エジプトの社会とその伝統文化」と題し、主に「ラマダンという聖なる1カ月の過ごし方」と「エジプトの女性の社会的な地位とその発展」について話された。ラマダンの季節がくると、ダリア夫人の言葉を思い出す。ラマダンは神様と自分との約束で、忍耐を学ぶと同時に、困難な状況にある人たちのことを身をもって体験し、思うことである。震災から5カ月、いまだ困難な状況に暮らす人たちを思い、私もまた、断食に挑戦してみようか。






(上毛新聞 2011年8月16日掲載)