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前・伊勢崎市赤堀歴史民俗資料館運営協議会長  大塚 富男(伊勢崎市下触町)



【略歴】新潟大大学院修士課程修了。地質調査会社勤務の後、1983年に学習塾開校。7年前、信州大で博士号(理学)取得。群馬大など3大学の非常勤講師。



資料館の活動に学ぶ



◎企画展や講演で活性化




 4年間ほど伊勢崎市赤堀歴史民俗資料館の運営に携わらせていただいた。その間、たくさんの人とお会いし話をする中で、さまざまなことを教えていただき、本当に楽しい時期を過ごすことができた。感謝である。

 1970年~82年、赤堀では大規模な土地改良事業が実施され、その過程で大量の土器や石器等が調査発掘された。当初は手狭な公民館にそれらは仮置きされていたが、貴重な遺物を展示・保存・活用するための施設として、85年に資料館が建設された。建物と備品だけで当時、約3億円の費用を要した。2005年の市町村合併で伊勢崎市に移管され、現在に至っている。

 入館者数の推移を見ると開館当初は年間5934人で徐々に減少し、1997年度には609人にまで落ち込む。その後、1100人~1800人前後で推移し、2005年の合併を機に3500人になり、09年度と10年度には5700人を超え開館当時に迫っている。入館者数の増減は活動度合いの一つの指標にすぎないが、活動は確実に活発な方向に向かっているといえよう。活動が元気な方向へ変わってきたのには単なる合併による数の効果だけではなく、それなりの背景と多くの人の努力がある。徹底した普及活動であった。その一端を紹介したい。

 まず、石器や土器や埴輪などの常設展示だけでなく、それまであまり行われなかったさまざまな企画展を催した。一例を挙げると、養蚕、猫、風呂敷、伊勢崎銘仙、お雛さま、お月見などをテーマに老若男女幅広い層にアピールした。それらは口コミ、市の広報、資料館情報紙、市のFM放送、新聞などの媒体を通して多くの人に伝えられた。

 また、毎年5回の講演会を企画した。多くの研究者や専門家にお願いして行われたもので、毎回50人ほどの参加が得られた。これまで「災害」「石」などに関する興味深いテーマで講演活動を行った。参加者を通して資料館が次第に認知されていった。加えて、資料館では学校教育との連携を目的として社会科教育に役立つよう、昔の人々が暮らしで使った道具をセットにして学校に貸し出した。その結果、社会科の先生方の間で資料館が認知され、学校教育との交流が行われるようになった。

 予算の削減が進む現実を前に、人とお金の不足は知恵とアイデアと実行力で対応することが必要であることを、資料館の活動を通して実によく学ばせていただいた。伊勢崎市にも価値ある民俗文化財・埋蔵文化財や資料館に代表される「モノ」とそれらをよりよい組み合わせで外部に発信する知恵、すなわち「ヒト」がある。前者をハード、後者をソフトと見るならば、今後このハードとソフトを融合することが資料館の発展につながる道と思う。





(上毛新聞 2011年8月25日掲載)