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イルミネーションデザイン・企画  斉藤 任俊(太田市鶴生田町)



【略歴】渋川市出身。米サンフランシスコ大卒。添乗員の傍ら、イルミネーションをデザイン、企画する。2008年から太田市でのイルミネーションを手掛ける。



省エネで演出照明



◎心癒やす明かりも必要




 日本国内の電力状況は夏以降も好転したり、改善することは難しいでしょう。東京の街では、間引き点灯をしても十分な明るさがあり、節電によって明るさを抑えた夜の景観を評価する声もニュースなどで見かけます。ただし、現在の状況が長期化するとなると、ただ照明を消して節電をするだけでなく、可能な限り心地よい空間の雰囲気を残せるような節電を考えなければならないと思います。

 商業施設などで共用廊下の照明を消しても、周りの店舗の明かりで共用廊下の明るさを確保できたりする場合があります。たとえば、天井を照らし出す間接照明があるとダウンライトを消してもそれほど暗く感じません。壁面や天井を照らす間接照明を連続して点灯することで美しい照明効果が得られる方法などもあります。ただしいろいろと減灯できるスイッチ系統があるかが課題です。

 建物の顔となる出入り口は他の場所よりも明るくしておく。また、道路や歩道、階段、その他夜間に人が行き来する場所で、治安や安全上、明るさが必要と思われる場所の消灯は見直す必要があります。日本中が節電を心がけている現状では、照明を使って、空間を演出することは果たして必要なのか。機能上必要な明るさがあれば演出照明がなくても生活することは可能です。しかし、過剰な明るさを用いず、心地よい雰囲気を作り出す照明デザインは、エネルギーの消費を抑えながら、心の豊かさや癒やしを生み出し、施設自体の価値を高めることができると感じております。

 省エネを実践しながら照明で心地よい空間を演出するためには、二つの方法があります。

 一つ目は必要な場所に必要な光を配置する方法です。空間全体を明るくする方法とは異なり、無駄な光を使わずに、同時に空間の演出も行います。この方法は震災後、省エネ性の高い照明手法として注目されています。天井や壁面を照らし空間全体の雰囲気を演出する間接照明と作業に必要な部分だけを照らす局部照明です。床面を明るくし床面照度を重視した従来の照明方法に比べ、消費電力を抑えながら心地よい空間をつくることができます。

 二つ目は鉛直面の明るさです。鉛直面とは床面などの平面に対して直交する壁面などです。鉛直面を照らすことで床面の明るさはそれほどなくても空間全体が明るく感じる効果があります。現在の日本のような状況では過剰な演出照明は慎むべきですが、明かりが経済活動や人間の気持ちに大きく影響を与え、復興に向けて街や人を元気にする明かりもある程度必要だと考えます。






(上毛新聞 2011年8月27日掲載)