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ミーティングポイント・ドゥープラス代表  長ケ部 さつき(大泉町北小泉)



【略歴】武蔵野音楽大ピアノ科卒。自宅でピアノ教室を開く傍ら、2001年に音楽を通じた地域交流を図ろうと「ミーティングポイント・ドゥープラス」を設立。


「いま何かをしたい」



◎世界に目を向ける若者




 3月11日の午後、高校生たちが集い討論するユース・フォーラム(国際ソロプチミスト主催)の開催準備のため、私たちは上毛新聞社東毛総局を訪れた。論文や審査方法など、開催に向けてたくさんのアイデアをいただき、次は太田市役所内の国際交流協会へ。エレベーターのスイッチに触れた瞬間、大きく揺れた。めまいかと思った。違う、これは地震だ。慌てて庁舎から飛び出した。市役所は左右に大きく揺れていた。こういった時どうすればいいと言われていたのだろう、と必死に思いだしている自分がいた。信号機が消えた交差点では、無秩序に車が行き来していた。

 数日後、私はブラジル人学校に向かった。彼らの表情はとても不安そうに見えた。日本語があまりわからない彼らは、インターネットで海外メディアによる情報を得ていたようである。パソコンのそばに来てほしいと言われた。さまざまな海外からの日本の情報に対して説明を請われた。信じられないほど大げさなものや悲観的なものが多かった。私は今の日本の状況や被災地との距離等を説明した。そして、状況が変わったら、真っ先に教えることを約束した。それから、訪れる度に子どもたちの数も笑顔の数も減っていった。少しの間でも、不安を吹き飛ばしてもらいたいと、みんなで大きな声で歌った。

 8月になって、少しずつ子どもたちが戻ってきたブラジル人学校から相談を受けた。「今まで日本の商社や国際交流団体など、たくさんの方々から援助していただいた。先日、福島に行ってきて、ボランティアの様子も見てきた。私たちも日本のために何かしたい。どのようにしたらよいかわからないので協力してほしい」。私はとてもうれしかった。すぐに動き出して、10月には震災復興のためのチャリティーイベントを開催することが決まった。

 ユース・フォーラムが東京の国連大学で開催され、MDGs(国連ミレニアム開発目標)について、関東甲越から集まった118人の高校生たちが意見を交わし、彼らの新しい視点で世界を考えた。彼らは、これまで発展途上国を援助することがあっても、まさか自分の国が被災国になるとは考えてもいなかった。震災を経験して、毎日の満ち足りた生活は、あまりにも壊れやすいものであると認識した。世界各国から貧富の差に関係なく、義援金や物資が瞬く間に集まり、温かい心を感じ、世界は一つだと感じたに違いない。だからこそ、今、世界に手を差し伸べたいと思っているのである。現実を知ることから始め、媒体を通じて貧困・飢餓・教育・環境等の世界の状況を発信していくさまざまなアイデアが発表された。ここにも「いま、何かしたい!」と、思っている若者たちがいる。







(上毛新聞 2011年9月1日掲載)