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◎共有する時間を大切に 最近、「看護とは何か」と考えさせられる機会が多くなった。保健師助産師看護師法には「『看護師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若(も)しくは褥婦(じょく)ふに対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう」と定められているが、私が看護師になってからの20年間で、その役割は大きく変化しているように感じる。 このように考えさせられる理由の一つは、チーム医療が推進され、多職種との連携が増えてきたことである。病院では、以前は患者さんにかかわることの多くは看護師が行っていた。しかし現在は、食事は栄養士、薬の管理は薬剤師、退院調整は医療ソーシャルワーカーと、それぞれの専門家がその役割を担っている。痰(たん)を吸引するなどの一部の医療処置は訓練を受けた理学療法士も行えるし、今後は介護職もできるようにしようという動きがある。施設では、日常生活の援助は介護職の方が行っている。それでは看護師には何が残るのだろうか? 二つ目は、医療の専門化、高度化に伴う看護の専門分化が挙げられる。私自身もがん看護という分野が名称に入った資格を持っているのだが、専門看護師はほかにも老人看護、慢性疾患看護など10分野に分かれており、認定看護師は19分野に分かれている。また、病院の中では診療科や患者さんの重症度で入院する病棟が分かれている。効率よく医療を提供したり、高度な治療を行うためにはこのように分けることが必要であり、看護師も病気や治療に関する専門的な知識を持つことは大切である。しかし、科や重症度が分かれることであたかも看護も別と看護師自身がとらえていることが多いのではないかと感じ、疑問に思うことがたびたびある。 三つ目は、立場上、看護師でも病院運営に関係する経済、経営についての知識を求められることである。患者さんやご家族に提供した看護が病院の収入につながっているのかなどと考えるのは看護師の仕事ではないと思っていたし、収益には関係なく患者さんに良いと思うことは何でもやれば良いと思っている。しかし、看護師が行うことにお金が付くということは、看護の価値が認められているということでもある。看護管理者を対象にした病院経営に関するセミナーが増えていることを考えれば、看護師の役割も変化しているのかもしれない。 ナイチンゲールは「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさを適切に保ち、食事を適切に選択し管理すること―こういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えることを意味するべきである」と述べている。状況は変わっても看護の基本は不変であり、患者さんやご家族と共有する時間を大切にしていきたい。 (上毛新聞 2011年9月22日掲載) |