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管理栄養士  小坂 桂子(高崎市中室田町)



【略歴】明和学園短大卒。病院、老人ホーム勤務を経て現在同短大非常勤講師。NPO法人群馬の食文化研究会理事。ぐんま女性会議で男女共同参画社会推進に取り組む。


食育の実践に学ぶ



◎半歩の前進から改革を



 11月19日に高崎市で開催される「ぐんま食育フェスタin高崎」を控え、私の所属する会も含め多くの団体が準備を進めているところかと思います。3年前、食育推進全国大会「ぐんま食育フェスタ2008」が群馬県で開催された後、桐生、富岡で県内フェスタが行われており、今回が3回目となります。

 そんななか、最近素晴らしい食育の取り組みをお聞きする機会を得ました。香川県の元学校長、竹下和男さんが講演で、著書『“弁当の日”がやってきた』にある実践内容を紹介されました。「親は手伝わないで」の一言から始まり、小学5年生の秋から卒業までに10回の弁当作りの経験を通し、つくる喜びに目覚め、そして、子どもたちが家庭に「くらしの時間」を生み出し、家族の絆を結び直したということです。「弁当の日」実践校は、全国で約600校。学校のみならず地域への広がりもあるそうです。子どもや親が「くらしの時間」の豊かさを求めれば「あそびの時間」はもっと楽しくなり、厳しいはずの「まなびの時間」に明確な夢や希望を抱くことができるでしょう。

 「弁当男子」という言葉が聞かれる昨今ですが、「弁当の日」の卒業生が20歳になり、食事の用意を男女の別なくほとんど自分でできている現状をお聞きしました。子どもは大人が考えている以上に一人前になろうとしています。また、親に大切にされている存在であることを確認しています。

 さて、先月『箱膳』というスタイルを活用した食育体験を、長野県飯綱町で学ばせていただきました。私自身、箱膳を使用しての食事は初めてでした。礼儀作法や食べものの大切さなどについて分かりやすい説明をお聞きしました。信州の皆さんは、『箱膳』のなかで大事な日本人の“食べごと”の世界との出合いを図っています。

 先日の健康相談でのこと。ある高校生は自分の昼食用におにぎり2個と果物を持参するだけでしたが、おかずの必要性を理解して、母親がつくってくれているおかずを自分で詰めていきますとのことです。また、ある大学生は母親が不在の夕食はインスタント食品で済ますようでしたが、週に一回、一品を自分で作ってみたいと話していました。半歩の前進から始めることの大切さも感じます。

 最後に、先日出会った一人暮らしの90歳の女性が、手作りコロッケやハンバーグを、近所の皆さんにお分けしていらっしゃる話をお聞きしました。「う~ん、素晴らしい」。食育について、末永く、そして、足元から見直していきたいものです。





(上毛新聞 2011年9月23日掲載)