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織物製造・販売  山岸 美恵(館林市仲町)



【略歴】1974年に結婚し、家業(山岸織物)の手伝いに入る。25年ほど前から二次製品のデザイン、製作を始め、前掛けやブラウス、シャツなど約20種類を手掛ける。


布を織る面白さ



◎端切れでも大切に扱う



 「布を織ること」の面白さの一つは、糸の太さによって表情が随分違ってくるということです。筬(おさ)(織物の縦糸の密度を調整し、横糸を打ち込む時に押さえる道具)に縦糸を入れる時、それぞれ本数を違えると、凹凸のある布が出来ます。

 単糸、双糸(2本の糸をよって1本にしたもの)でも、肌触りが違います。さらに、横糸を打ち込む時の強さや太さでも、別の反物が出来上がります。

 他には、抜染という手法もあります。これは、織り上がった反物に型を置いて、色を抜き取る方法です。図案をもとに型を彫りますが、抜染屋さんにある型を使うこともあります。各織元で専用の型を彫ってもらいます。 お店ののれんや祭りのはんてん等によく使われています。館林では唐棧縞(とうざんじま)の反物を抜染していますので、粋とは別のおしゃれな華やかさが出てきます。

 出来上がったそれらの反物は、注文で織った物のほか、一部は製品にしています。

 綿紬(つむぎ)は普段使いの布のため、バリエーションが豊富です。着物はもちろんですが、帽子、小物、インテリアに至るまで、どんな物でも作品になります。

 生地を求めに来た人やメーカーの方が、雑然とした倉庫兼作業場で生地を探している時などは、種類の多さに「まるで宝物の中にいるようですね」と言ってくれます。

 その後、出来上がった作品を見せてくれた時に、元の反物からは想像もつかない作品に変身していることがあります。特に、細かい裁断くずを利用した、手間のかかるパッチワークのバッグやクッションを見ると本当にうれしいです。

 一反の布を織ることは、大勢の人の力を借ります。良い物を作るには一工程でも手抜きはできません。そうして出来た布は、どんな端切れでももったいなくて、粗末に扱えないものですね。布を大切に扱ってくれる人に心から感謝いたします。

 以前、2人の孫に「甚平」を作ったのも、大いに刺激を受けたことがきっかけでした。館林紬での子供の甚平は、大人向けの柄にかかわらず、かわいらしく似合い、今では製品として販売するようになりました。

 それぞれ、風合いの違う布を織ることや2次製品を作ることは、デパートへ行ったり作品展を見たりと、日常生活の中に必ずヒントがあるものです。こんなものがあれば、あんなものが欲しいと思うこと、そして、工夫してみることが第一歩で、きっと楽しいことが生まれてくるのではないでしょうか。






(上毛新聞 2011年9月25日掲載)