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NPOヘルスプロモーションセンター理事長、医師  佐藤 和子(高崎市片岡町)



【略歴】桐生市生まれ。桐生女高、福島県立医科大卒。麻酔学や医化学を研究し兵庫県立尼崎病院心臓センター、国立循環器病センター勤務。元大塚製薬健康推進本部長。


病気の予防のために



◎各自で正しい食生活を



 トマトの巨木をつくられた野澤重雄氏(1985年の筑波科学万博にて11カ月間で1株から1万個以上の実を収穫した水気耕栽培法ハイポニカの開発者)との出会いから、私は「健康を支える栄養学」を構築し、それに基づく「正しい食生活」を組み立て紹介しています。

 24年前、水上温泉で開かれた野澤氏のハイポニカ研究会で、草柳大蔵氏と共に講演しました。その時、草柳氏は、次のように言われました。親友2人は、50代で心筋梗塞で亡くなった。2人とも酒は飲まず、タバコは吸わず、だから長生きできると言っていたのに…。医者になぜ亡くなったのかと尋ねると、わからないというので、原因不明と思っていたが、今日の話で、食べ方が誤っていたからなのだと分かった。2人とも、シャブシャブ料理では、肉だけを食べて野菜・キノコは残し、肉を追加注文して食べていた。草柳氏が健康のためには野菜・キノコを食べるように言うと、「酒やタバコをしないのだから関係なし」と言い切り、食後の羊かんなどの甘い物には目がなく「別腹だよ」と好んで食べていたといいます。“病気は起こるべくして起こり、治るべくして治る”と思います。

 「病気を防ぐ医者でありたい!」。その願いをかなえられる状況におかれているのはとても有り難いことです。当センターは12人の発起人でスタートしました。講演はすでにいくつか引き受けていますが、講座はまもなく指導者養成講座の1回目を開講します。いつか「正しい食生活」の理論と実際についての学習を、群響の楽団員の方々のように県内全域の学校を訪れて伝えたいと考えています。

 「正しい食生活」は四つの柱で成り立ちますが、人間として生きられる時間は130歳までで、これまでの最高齢者は女性ではフランス人が122歳、男性では日本人泉重千代さんが120歳です。今、貧しい食生活に陥っている人が多すぎます。しかも薬代を払えないほどの生活困窮者が増加しています。がん患者も10年前は91万人位でしたが、今日では治療中152万人、そのうち14万人は入院中です。一言にして言えば、「がんは急性に起こった老化現象」と言えますので、食生活が鍵を握っています。潰瘍性大腸炎の難病の方でも「正しい食生活」の実践により難病手帳を返された方もおります。

 野澤氏が言われていたように、トマトの巨木は環境(心)と、一定でかつ不足のない栄養素の日常の安定供給により、あれだけの長期の生命力、病気に対する大きな抵抗力、老化を否定する旺盛な生理機能を実現したわけです。同様に、私たちの心身の健康は、「正しい食生活」によって支えられていますので、一人一人が身に付ける必要性があるのです。








(上毛新聞 2011年9月29日掲載)