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学習塾経営  福田 一男(大泉町吉田)



【略歴】新潟大大学院修了。三洋電機で半導体開発に携わり、07年、県内公立校で初めて民間から登用され、昨春まで太田商高校長。著書に『コスモスは咲く、必ず咲く』。


学校と企業の違い



◎職場間の交流で活性化



 前回に引き続き、群馬県初の民間人校長として公立高等学校で経験したことを企業との違いという視点でお話ししたい。

 最初、校長として学校を経営して戸惑ったのは民間企業と学校では組織の形態が大きく異なるという点であった。企業はピラミッド型であるのに対し、学校はフラットでマトリクス的な組織形態なのである。企業では社長の下(あまり表現は良くないが)に部長がいてその下に課長、係長、一般社員と続き、情報伝達はそのピラミッドツリーを通して行われる。業務内容の変化や昇進・昇格などを求めて安定的な上昇志向が生じる。

 ところが、学校では管理職は校長と教頭の2人だけ。それ以外の教員間には上司・部下という意識は全くなく全教員が横一線に並ぶフラットな組織となっている。教員は各学級の担任や授業のほかに教務や生徒指導、部活動の顧問など複数の業務を併せ持つ。1人の教員が複数の業務をマトリクス状に兼務しているのである。ある分掌の長(例えば学年主任)が別分掌の長(例えば教務主任)の下で働くなどその時々で上下関係が逆転する。その結果、教員には上下関係の意識がなくなり年功序列となる。

 また、企業の目的は利益の追求であり、数値目標の設定が容易である。しかし、学校つまり教育組織では目標の具体的な数値化そして結果の評価が難しい。校長による教員の勤務評価は実施するが現状、評価結果を給与に反映できないのはその表れであろう。

 教員の給与は決して高くない。わずかながらの定率な手当を理由に残業や休日出勤の手当は出ない。仕事をやってもやらなくとも給与は同じなのである。しかし、多くの教員は生徒のために時間を気にしないで働いている。金銭や報償では動かず、情熱や愛情で動く。ここが教員の一番良いところなのではないかと思う。

 教員は校長をどうみているのかというと同じ教員の1人、校長という職位についている同僚くらいにしかみていない。校長が職員会議で改革案を提案すると、たいていの教員は平然と異を唱えるような風潮が蔓延(まんえん)している。報酬は低く、人間関係が複雑な校長職にはつきたくないという教員が多いのが実情である。

 学校現場はこのように企業とは別世界の職場であったが何事も経験してみないとわからない。外部よりみた学校と実際に立った学校現場とでは大きく異なっていた。どちらの職場が良い、悪いなどと言うつもりはない。郷に入れば郷に従え、しかし改善すべきところは改善する。外部の血を入れることで、今まで気づかなかったことに気づき、外部環境の変化を知り自分たちを進化させることができる。さまざまな職場そして職種間の交流により職場が活性化されると信じている。








(上毛新聞 2011年9月30日掲載)