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共愛学園前橋国際大・入試広報・進路センター長  岩田 雅明(前橋市昭和町)



【略歴】東京都立大法学部卒後、共愛学園に就職。共愛学園前橋国際大の立ち上げと改革に尽力し、その経験から大学選びや学校経営などの著書3冊を著した。


大学の社会的使命



◎学問研究の先見据えて



 7月末に日本私学振興・共済事業団が集計した、今年度の私立大学等の入学志願動向が発表された。それによると、入学定員を充足できていない比率は、大学で39%、短期大学で66・6%となっていて、いずれも昨年度より増えている。

 少子化の影響が主因ではあろうが、全般的に充足できていないということではなく、規模別で見てみると、入学定員600人のところで昨年度、今年度とも充足の有無が分かれていることが見て取れる。入学定員600人といえば、学部数が3ないし4程度で、比較的歴史のある大学が多い。ちなみに県内の私立大学は、全て入学定員は600人未満となっている。

 一般的に規模の大きい大学は歴史もあり、知名度も高く、施設・設備、カリキュラム等も充実しているといえるので、そのことからすれば定員充足は当然の結果といえるかもしれない。

 しかし小規模な大学も、小規模ならではの特性を活かした、きめ細かな教育という面で特色を発揮し、規模の大きい大学との差別化を図ることで、活路を切り開いていくことは十分可能であると思う。18歳人口減少の踊り場であり、経済環境の悪化に起因する受験生の地元志向という追い風が吹いている、まさに今こそが好機といえよう。

 差別化を効果的に図るためには、大学を取り巻く厳しい環境に対して、強みを持つことが必要となる。現状の厳しい環境といえば、長引く不況による学費負担の困難さも挙げられるが、一番の脅威として感じられるのは大学を卒業しても就職できないという状況ではないだろうか。

 今年から大学は、卒業後の進路を明示することが義務付けられたが、その結果を見てみると、実質就職率(卒業者から進学者を控除した数を分母とし、就職者を分子としたもの)が40%を切る学部も出てきている。高校の進路担当教員も、これまでは進学するなら四年制大学へと指導してきたが、この実質就職率を見ると、その方針が揺らいでしまうと言っていた。

 このような厳しい環境に本県の大学が対応するためには、一つには県内の産・官・学の3者が連携をし、それぞれの情報の周知、共有を図ることである。県内の大学生が、県内企業のわずかしか認識していないという実情は、改善する必要がある。

 そしてもう一つは、大学が、自らの機能が学問の研究を通して社会人を養成することである、ということを改めて認識することではないだろうか。すなわち学問の研究そのものでなく、その先を見据えた教育を実践することが、地域型の大学には求められているのではないだろうか。

 そして、これは競争戦略にとどまらず、大学の社会的使命でもあると思う。








(上毛新聞 2011年10月1日掲載)