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元・神流町恐竜センター学芸員  佐藤 和久(神流町神ケ原)



【略歴】埼玉県出身。千葉大卒。モンゴルでの化石発掘を機に不動産会社を退職。1999年から2011年3月まで恐竜センターに在籍。03年には、学芸員の資格を取得。


化石レプリカ作製体験



◎引率者も一緒に参加を



 恐竜センターでは現在、定期的に化石発掘体験と化石レプリカ作製体験を行っている。ちなみに、発掘体験は1999年から始め、レプリカ体験は2001年から子どもの団体を対象に始めた。

 団体も10人以下であればレプリカ体験を行うのは難しくない。しかし当時、指導者は私1人であり、30人以上の団体ともなると、大抵数人が作業にまごつき、その対応をしているうちに材料(石こう)が固まり、作業を最初からやり直さなければならないことがある。そこで、事前に団体の引率者に作業のポイントを話したり、子どもたちの手助けをお願いするなど協力を仰ぎ、体験がスムーズにできるよう工夫した。完成したレプリカを壊す子もいたが、その場で修復することで、子どもや引率者はすごく喜んでいた。

 当初、体験を希望するのは自然体験教室の団体が多かった。その後、学習塾やスイミングスクールなど、年々参加数が増えたが、05年まではほとんど1人で発掘・レプリカ体験に対応していたので、特にレプリカ体験は、最初のころから参加していた団体関係者と打ち合わせをしながら、より簡単、よりスムーズにできるやり方に変えた。もちろん、レプリカ体験後に団体関係者からその評価を聞き、さらにやり方を改良していった。そして、体験サポートが加わった06年には、レプリカ体験のプログラムが確定した。 しかし、団体が増えるにつれ、関係者及び引率者の質が変わってきたのか、事前に下見に来て、体験の説明をしても、実際に行うときに全く関わってこないことがあった。子どもたちも指導役の私が忙しいと引率者にやり方を聞くのだが、分からないと言う人がいた。体験前に子どもたちと一緒に説明を聞いているにもかかわらず、よく聞いていなかったのか、もしかしたら、失敗したり、間違ったことを言ったら恥ずかしいと思ったのかもしれないが、せっかく子どもたちが聞いているのに答えられないというのはすごくもったいないと感じた。

 なぜかというと、子どもたちと一緒になって参加する引率者の団体は、まとまりもよく、体験活動が盛り上がることが多いが、引率者が体験に積極的に参加しないと、子どもたちもだんだん体験自体がつまらなくなる傾向がある。もちろん、こちらも作業中に恐竜に関する質問に答えたり、普段見ることのできない貴重な化石を見せたり触らせたりするなど、子どもたちの関心を引く試みはするのだが、大多数が白けてくるからである。

 やはり人をまとめるには、みんなと一緒になって楽しむくらいの余裕が必要だと感じたのである。







(上毛新聞 2011年10月2日掲載)