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藤岡北高教諭  中尾 徹也(藤岡市牛田)



【略歴】藤岡市生まれ。東京農業大農学部卒。1995年、県の農業教員として採用され、伊勢崎興陽高に赴任。その後、富岡実業高を経て、昨年から現職。


適切な農場管理



◎リスク除き安全農産物



 消費者は、農産物の「鮮度」「食味」「価格」にこだわるだけではなく、「安全」や「安心」を強く求めている。そのため、農業生産者は消費者や販売先に信頼される農産物を提供できるよう農場管理に努めている。

 近年、信頼される農場管理と持続できる農業生産のためにGAP(農業生産工程管理手法)の導入に取り組む農業生産者や農業法人が増加している。GAPはGood Agricultural Practiceの略で「良い農業のやり方」のことである。GAPでは、適切な農場管理を実践することにより、農産物の安全性の確保だけではなく、環境負荷の低減、農業者にとって安全で健全な職場づくりを実現し、持続的な農業経営に取り組むことを目的としている。

 適切な農場管理の実施にあたり、産地や農場でのリスクを検討する必要がある。つまり、農産物を生産するうえでの危害要因を明らかにし、それを排除することにより、リスクを小さくするか、もしくはなくしていくことが農産物の安全性につながっていく。

 例えば、ホウレンソウの収穫では、ホウレンソウを根元から包丁で切り、収穫かごに入れる。かごがいっぱいになったら、トラックで調整作業場に運びこむ。この工程では包丁や収穫かごの汚れから病原菌が付着する恐れやトラックの荷台に残った農薬や移動中の農薬飛散で汚染される恐れなどの危害要因が考えられる。

 そこで、包丁や収穫かごは使用するたびに洗浄する、トラックの荷台は農薬や肥料運搬後は徹底洗浄する、収穫物の運搬時はシートで覆う―などの手法や手順のルールを作成し、作業にかかわる全ての関係者が守れるようにマニュアル化する。そして、全ての生産工程でリスクを受けず、リスクは持ち込まない、存在するリスクは排除することを実践することで農産物の安全を確保できる。また、このような農業生産者の取り組みを消費者が知ることにより信頼関係が築け、安心につながる。

 日本GAP協会では、JGAP認証を行うとともに、導入を考える農場に指導をし相談にのる指導員を育成している。本県農業高校には私を含め、4人の教職員がJGAP指導員の資格を得ており、農業教育に取り入れている。

 高等学校では2013年から新学習指導要領が全面実施される。農業における改善事項では、GAPの手法や残留農薬のポジティブリスト制度、HACCPなど、安全な食品の供給に必要な取り組みに関する内容が充実している。これからの農業生産を担う農業高校生に必要な基本的な知識や技術として積極的にGAP手法を取り入れ、「安全・安心」な農産物生産に貢献していきたい。







(上毛新聞 2011年10月9日掲載)