視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
プロデューサー・プランナーK&AssociatesInternational代表 
                               川島 佳子
(東京都港区)



【略歴】館林市出身。立教大大学院修了。企画会社、財団職員などを経て現職。NPOちきゅう市民クラブ事務局長、県人会理事、ピッコロ・バイオリン研究会代表、ほか。


もっと関心をもとう



◎本当の“地球市民”へ



 オピニオン委員になってこの1年、日本は東日本大震災、原発事故という未曽有の大災害を経験した。このことを通して、私たちはさまざまなことを知り、学び、または、何も知らなかったということに気づかされた。

 世界中の人々や国からの支援をいただき、文化や国境を越えて同じ地球に暮らす市民としての連帯を強くし、その温かい友情に感謝し心強く、さまざまな可能性を実感し、希望を持った。被災された方々を思い何ができるのか、それぞれがそれぞれの仕方で支援し、現在も続いている。私たちは、逆に被災者から勇気づけられたりもした。

 学んだことの一つに、子どもたちの力があった。あのような恐ろしい体験をし、それでもしっかりと前を見て、率先してお年寄りを気遣い、助け、環境に積極的に順応していく強さ、柔軟さ。大人よりもよほどしっかりしている精神力と心。この子どもたちがいる日本は、大丈夫と確信した。

 一方で、政治の混乱、経済の停滞、環境汚染、農産物等への影響、さまざまな補償問題、そして復興支援財源のための増税プラン。原発事故では、東京電力、原子力保安院・族議員の利己主義、拝金主義、隠ぺい体質、これらの権力構造が安全体制やシステムを凌駕(りょうが)していた事実をあらためて知ることとなった。これらの顛末(てんまつ)は翻ってみれば、われわれの無関心が招いた結果かもしれない。

 「国が密約文書を破棄」と言う場合、国とは政府閣僚や当該省庁の役人を指すが、いったん、「国が補償する」「国が責任をとる」「国が裁判に負けた」という場合には、これは国民であり、国民の税金を意味する。私はいつも、「国」という曖昧な言葉を使ってほしくないと思う。自覚をもってもらうためには、担当閣僚や役人の責任を問うペナルティーを課してほしいといつも思う。

 だが、いろいろと考えれば堂々巡りで、ついには自分に帰ってくるのだ。私たちに許されているのは唯一、選挙で代議士を選ぶことだ。代議士はその名の通り、われわれの代表であり、われわれの意見や陳情に耳を傾け、より良い社会の実現のために必要な政策や法律を作り、官庁を通して実施する。われわれは意識をもって代議士を選び、その代議士の仕事をチェックする必要がある。もっと、日常的に政治に関心を持たなければならない。

 今は一生懸命な正直者、責任感の強い人が、何だかばかをみる社会のように思える。われわれは割の合わない不条理な悲しい現実を受け入れている。それはおそらく“自己責任”を十分果たしていない結果なのかもしれない。あきらめずに本当の“市民”になる、そういう自覚と意識を一人一人が持った時、世界は変わるのではないだろうか。






(上毛新聞 2011年10月12日掲載)