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◎健診データ読み解いて これまで5回にわたり、予防医学に関するコラムを書かせていただきました。いにしえの予防医学は主としてコレラ、ペスト、天然痘といった感染症のまん延を防ぐ医学であり、衛生学と微生物学が飛躍的に進歩した現代においては、これらの病気の大半は驚異ではなくなりました。 しかし一方、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病といった生活習慣病が、心筋梗塞症や脳卒中などの致死的な病の源流となり、私たちを脅かしています。 これらの生活習慣病のさらに源流にあるものは、とくに日本人においては“節約遺伝子”とでもいうべき、飢餓に際して延命できるような“栄養を貯金する”遺伝子が西洋人にくらべはるかに優秀であるために、食生活が欧米化した現代においてはかえってあだとなっている、という事実です。 つまり、同じ食生活をしていても、日本人はこれらの病気をおこしやすいということです。したがって、食生活と運動さえきちんと管理していれば、病気の半分は予防できる(残りの半分は悪性腫瘍、事故など)はずです。 生活習慣病に対する予防医学の歴史は深く、紀元前2600年に中国で最初に書かれた医学書に、 上医医之未病之病 中医医将病之病 下医医己病之病 と記されています。 わかりやすく訳すと、優秀な医者は皆さんが病気になる前に病気にならないようにする、普通の医者は皆さんが病気になってから治療する、無能な医者は皆さんの病気が悪くなってから治療する、ということです。 とはいえ、現実の医療の場では上医となることは非常に困難です。なぜなら、皆さんは症状があって初めて病院を訪れることがほとんどですから、ほとんどの医師は上医になる暇がありません。 幸いわが国には「健診」という世界に冠たるシステムがあります。健診から得られたご自身のデータを注意深く読み解いてください。健診データには驚くほど多くのキーワードがかくされています。腹囲、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、空腹時血糖値は生活習慣病に直結する因子として有名ですが、尿酸値、血清クレアチニン値(またはeGFR値)、ALT値(またはGPT値)、脂肪肝も再三指摘してきたように重大な意味を持っています。 どうぞご自分の健診データをかかりつけの医師にお見せください。でも、ふん、と軽くあしらわれたら、その医師は下医かもしれませんのでご注意を。 (上毛新聞 2011年10月13日掲載) |