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わたらせフィルムコミッション(WFC)代表  長谷川 博紀(桐生市東)



【略歴】三重県出身。1998年に森秀織物入社。現在、同社社長。元桐生青年会議所理事長。2010年4月からWFC代表として映像作品製作の支援活動に取り組む。


少子化時代の町づくり



◎バランスの良さ重点に



 産業や営みがあって働く場所となり糧となり、そこに人が集まって住宅地ができる。生活に必要なインフラがあって安心して暮らせ、町となり大きな都市になっていく。永続的に暮らした軌跡が伝統になり、自然と歴史と文化をつくっていく。きっと日本中で繰り返されてきた育みが、これから劇的に変わっていくと考えます。

 それは、近年危惧されてきた少子化という問題が現実になってきているからです。政策を決定する方々の年齢から推測すると、どの程度まで感じておられるか疑問であるし、唯一、首都東京周辺では、少子化の波とはかけ離れた人口増加が続いています。子ども手当のような政策に見られるように、根本的な問題を直視されていないと感じます。

 ある統計では、これから40年もしないうちに日本の人口は8千万人程度になると言われています。たったの40年です。現代の子どもたちが親になり働き盛りを迎えるころには、人口が激減しています。

 さてそんな時代に、どれほどの地方都市が満足に機能しているでしょうか。現在のインフラや活気を保っていけるでしょうか。きっと想像もつかないほど閑散とした場所が増えていくと思われます。

 人口が減ってもさほど影響はないと言う方もいますが、人口が半分になってもそう言えるのでしょうか。大都市部は増えている勘定なので、地方都市では30年後には人口が半分になっているかもしれません。人口が半分になっても今のままの行政サービスが成り立ちますか。それを続けていけば破綻します。

 現在でも、小学校・中学校の統廃合が進んでおりますが、それでもクラスを形成するのにぎりぎりの学校がたくさんあり、人数が少なくてクラブ活動が満足に行えない団体競技もあると聞きます。それなのに一部の大都市では、待機児童問題というものがあるという矛盾。暮らしやすい町とは何か、考えさせられます。

 産業・教育・観光・福祉・都市機能など、全てにおいてバランス良く育まれた町が繁栄するのではないか、また、それを支える根幹が文化・芸術・地域性なのではないかと考えます。

 飛びぬけた魅力のある町、自然と人が集まる大都市、それ以外には働き、暮らしやすい快適なバランスの良い町が残っていくでしょう。農業から工業も含めて、1次産業を中心にした自立できる町が強い都市になっていくはずです。

 バランス良くコンパクトシティーを形成しなければならない時代がもう来ています。実感の湧かない方はご自分のお住まいの地域人口推移や出身学校の児童数などを調べてみてください。その人数と経過年数を計算すれば、数十年後に自分の地域がどうなっているか少し想像できると思います。







(上毛新聞 2011年10月18日掲載)