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生花店 有花園専務取締役  亀田 慎也(高崎市上和田町)



【略歴】高崎高、早稲田大教育学部卒。1998年から家業の生花店で働き、高崎青年会議所の活動にも携わる。高崎田町屋台通りを応援する「旦だん那な衆の会」代表。


競馬場跡地の利活用



◎市民に考える土壌提供



 高崎駅東口から徒歩15分の位置に11ヘクタールの土地があると言えば「高崎競馬場跡地」と想像がつく方も少なくはないだろう。しかし、実際に足を踏み入れてその広大さを実感した人はどれほどいるだろうか? 群馬県、高崎市に複数の有識者を交えて数年来、この跡地利活用に関して議論がなされてきた。今年3月には調査会社に委託した検討結果も公表されている。今年の検討スケジュールによると、第三者による検討を踏まえ「県民参加による検討」と書かれているが、このあり方について考えてみたい。

 2009年2~3月に実施されたアンケートによると、回答者のおよそ8割が「高崎競馬場に行ったことが無い」と答えている。また、現在の外観も刑務所を思わせるような壁が500メートルあまりも続き、足を踏み入れるのもはばかられる。そんな状況下で実施されたアンケートにどれほどの信ぴょう性があるだろう。

 これは実際に足を踏み入れた者としての率直な感想だが、小さな門から一歩場内に入ると外観からはおよそ想像もつかない、とてつもなく大きな空が開けている。この広大な敷地を感じずに、また高崎駅からの距離を体感せずに答えを導き出せるものだろうか。

 現在、県と市の共催で「行ってみよう!高崎競馬場跡地」という企画が催されている。行政の役割としてはこうした形で年に1回集客的なイベントをするだけでなく、日常的に使えるように借り主であるJRAとNRSに働きかけ(むろん、借り主に優先権)、利用の手順を整えることが本筋であろう。あの忌まわしい壁を取り除くだけでも想像力は格段に広がる。

 そして、現在出されている「機能導入可能性調査」に関しては情報提供を積極的に行い、たとえば5年間と期限を区切って、その後新たにアンケートをとることを公表した上で市民に利用してもらう。人口減少という社会の転換期、国土軸から見た立地を踏まえ、市民が本気で考える。1年ごとに討議会を開催してもよい。そうした熟議を重ねながら、県民・市民の合意を形成し計画を練り上げていくことで、利用頻度の高い施設となりえるだろう。

 社会課題の解決を過度に行政に依存してきたことが、日本の民主主義を劣化させてきた。もう一度原点に立ち戻り、生活と直結した課題に対して自らも積極的に関わっていくことが市民にも求められている。その基盤を整備するのが行政の役割であり、偏りのない情報公開を行うことで市民に考える土壌を提供する。政治の停滞を嘆くばかりでは何も解決しない。市民一人一人が何をすべきか熟慮することこそが、次世代に対する責任であり、歴史に対する真しんし摯な態度といえるのではないだろうか。







(上毛新聞 2011年10月19日掲載)