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スポーツコーディネーター  藤口 光紀(東京都大田区)



【略歴】旧粕川村出身。慶応大学卒。サッカー日本代表、浦和レッズ社長を経て、現在広島経済大学教授、日本サッカー協会・Jリーグ参与、新島学園短期大学客員教授。


サッカー教室に思う



◎指導者の熱意で成果



 毎年8月に開催される桐生市サッカー協会主催の中学生年代を対象としたサッカー教室に参加している。1993年に新しいスポーツ文化「Jリーグ」が開幕したが、その年に第1回が開催され、その後も継続している。当時は、浦和レッズのクラブスタッフとしてJクラブの活動に携わっていたが、私の父も桐生市と関係が深かったこともあり、微力ながら故郷群馬に役立つことができればと思い、サッカー教室を引き受けたのだった。気が付けばJリーグと共に19回を数える。桐生市サッカー協会の皆さまの熱き心に影響を受けたことは間違いない。こちらが毎回新たなエネルギーをもらうことになるからである。

 子どもたちを対象にしたサッカー教室であるが、実は最初のころは、その日の夜に開催される指導者の皆さまとの懇親会が重要な役割を果たしていたと思われる。Jリーグが開幕して、それまでサッカーにはあまり興味を示さなかった子どもたちもボールを蹴り始め、小中学生を対象にしたサッカー部やクラブができた。だが、サッカー経験のある指導者が少なく、学校の顧問の先生方もサッカーについての知識が乏しく、不安を抱えていたことは確かであった。そこで、「教えようとすると、知識がないと不安になるが、子どもたちと一緒にサッカーの楽しさを味わう気持ちになれば、その気持ちは子どもたちに伝わりますよ。子どもたちと一緒にサッカーを楽しんでください」と声をかけたことを思い出す。

 徹底した根性論を前面に出して、筋トレと走り込みを行っていた指導者に対しては「まず子どもたちにサッカーの楽しさ、スポーツの喜びを感じさせてください」「中学校を卒業する時に、サッカーは楽しい、もっとサッカーをしたいといった子どもたちを増やしてください」とお願いしたことを思い出す。その当時の皆さんは、現在立派な指導者になられ、今でも子どもたちの指導に携わっていることを大変うれしく思う。

 今年も8月21日に桐生市陸上競技場で開かれ、緑の芝生の上で中学生150人と一緒にボールと戯れ楽しい一日を過ごした。10年前に比べて子どもたちの技術力向上には目を見張るものがある。現代は居ながらにして世界の情報を知ることができ、メッシのような世界一流選手のプレーもいつでもどこでも映像で見ることができるので、子どもたちの頭の中には自然とよいイメージがインプットされているのであろう。それに日ごろからの指導者の皆さまの熱心な取り組みが成果を上げてきているものと強く感じるのである。

 物事を運営する立場の人たちの情熱、使命感、行動力がなければ何事も動かない。これからも、桐生市、群馬県サッカーのさらなる発展を期待したい。







(上毛新聞 2011年10月23日掲載)