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新島学園短大准教授  亀井 聡(高崎市飯塚町)



【略歴】宮城県生まれ。県内の児童養護施設在職中に資生堂児童海外研修に参加し、豪州の児童虐待の取り組みを視察。その後駒沢大大学院を修了し、2006年から現職。

依存的自立



◎公益法人や大学が支援



 前回は、社会的養護の子どもの自立を考えるときに、依存的自立としてとらえ、支援システムの構築が必要であると述べた。今回は、依存的自立についてさらに考えてみたい。

 依存的自立は特別なことではなく、一般家庭における大学等への進学の際に利用されている。日本学生支援機構の奨学金などがあり、ごく当たり前に利用されている。依存的自立とは学生本人をはじめ、当事者家族がインフォーマルに資源がないときに、第三者の力を借りて自己実現を目指すことである。

 依存的自立には、第三者の協力が必要不可欠になる。明治時代に社会的養護において進学のための支援をしたのは、2013年大河ドラマの主人公である新島八重の夫である新島襄であり、依存的自立の支援の先駆者であったともいえる。

 近年、社会的養護の高校生の進学に向けての支援、すなわち依存的自立を支援する公益法人、企業、大学等が増えてきている。それぞれが単独で支援する場合もあれば、公益法人と大学が連携して行っているものもある。 公益財団法人資生堂社会福祉事業財団は、15大学等と連携している。一定の条件を課してはいるものの、社会的養護の高校生の進学のために支援を行っている。県内で同公益法人と連携している大学は新島学園短期大学だけであり、さらに同短期大学は独自の支援も実施している。

 社会的養護での依存的自立を実現するには第三者の協力が必要不可欠である。そして、子どもの進路については、当事者である高校生と入所している施設、通学している高校との話し合い、言い換えれば三者面接を進めていく。

 しかし、施設と高校双方が依存的自立を支援する機関を知っていなければ選択肢が制限されて二者択一になり、可能性が制限されることになる。それは貧困につながることになる。

 依存的自立を進めるために、社会的養護の高校生の進学に関する情報は、高校より施設の方が得られやすい。この情報を高校と共有することから始まる。そして、情報を高校と共有化していきながら話を進めていくことが重要である。さらに、当事者である高校生に大学のオープンキャンパスなどへ積極的に参加させることや、進学情報にアクセスできる環境、すなわちインターネットを使用できる環境を整えることも重要である。

 これらを通して当事者である高校生が自分の進路、ひいては自分の人生について考える機会を提供し、自己選択、自己決定の環境を整えることが必要と思われる。






(上毛新聞 2011年10月27日掲載)