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県防犯協会専務理事  岡 正雄(前橋市下石倉町)



【略歴】中央大法学部卒業後、1974年に拝命。伊勢崎署長、犯罪抑止対策実施本部長を経て退職。2008年4月から現職。県安全安心まちづくり推進協議会委員も務める。

増える空き巣被害



◎「狙われにくい家」に



 群馬県防犯協会が、公益認定を受け「公益財団法人群馬県防犯協会」となって2カ月が過ぎようとしている。犯罪の発生を1件でも少なくして安全で安心な街の実現を目指している。ところで、犯罪の発生件数は2005(平成17)年以降、6年連続で減少し、昨年は2万2千件と04年の半数となった。本年もその減少傾向は継続し、9月末現在で513件、約8%減少している。

 全体的な減少傾向の中で、増加している見過ごせない犯罪がある。それは留守宅に侵入する泥棒、いわゆる「空き巣」の被害だ。警察本部の統計によれば、9月末の発生が982件で118件、約14%増加している。数年前に200件以上の空き巣を繰り返して「ご用」となった泥棒(職業?)がいた。取り調べ担当刑事が、この男に「狙う家」を「独り言」で言わせてみた。すると「狙う家」は、次のような家だという。

 (1)2階建てで一戸建ての家(2)隣が空き地または田畑(3)道路から家の中が見えない家(垣根や塀)(4)防犯カメラやセンサーライトが付いていない家(5)夕方になっても電灯がつかない家(6)犬を飼っていない家。それにあえて付け加えれば「お金のありそうな家」。その泥棒は昼間はスーツを着て、狙える家を探し、夕方まで待ち、電灯のつかない家のチャイムを鳴らす。家人が出てくれば適当な家の道を聞いてお茶を濁す。誰も応対しなければ表へ回り、ガラス戸を破り、侵入するという手口だ。これは一人の泥棒の手口ではあるが、この6項目に該当しないようにすればかなりの確率で空き巣被害は防げるはずだ。そこで県民の皆さまには、自分の家をもう一度見直し、「空き巣犯人に狙われにくい家」にしておくことを提案したい。

 例えば、1カ所に二つ以上の鍵を付け(ワンドア2ロック)、その鍵は確実に掛ける(犯人は侵入までに時間が掛かるのはイヤだ。犯行を諦める時間は5分までが7割近い)。また、防犯カメラ等は、捕まる可能性が高い上、家人の防犯意識の高さがうかがえることから泥棒としては避けたい場所だ。だから狙わないのだ。

 前橋駅南口に社屋があり、防犯協会の賛助会員として平素から「防犯」に貢献している「群馬セキスイハイム」様から「住まいの防犯対策(泥棒に狙われない家にする)」のクリアファイル1万枚の寄付を受けた。深く感謝しつつ広報啓発活動に活用している。

 そもそも防犯協会の活動は、企業や個人の皆さまの「寄付」やボランティアにより成り立ち、支えられている。今回の好事例は、今後の企業等の社会貢献のあり方を暗示しているかのようだ。これからも「他人の幸せが自分の幸せと思えるような安全で安心な街づくり」を目指していきたい。






(上毛新聞 2011年10月31日掲載)