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◎絆を深めた「花笠踊り」 震災復興のためのチャリティーイベントで、16人のブラジルの子どもたちが花笠踊りを踊った。色とりどりの浴衣に身を包み、真っ赤な花のついた笠を手にしてにこやかに踊る姿は、実に美しかった。まるで西洋の絵画を見ているようだった。会場は称賛の拍手に包まれた。はにかむ子どもたちの表情は、とてもかわいかった。踊った直後から、もう一度踊ってほしいという声が次々と寄せられた。 「自分たちは、今まで日本の方々からたくさん援助していただいた。私たちも何かしたい」と、太田市内のブラジル人学校(パラレロ校)の発案でこのイベントを行った。その中で日本の踊りをやりたいと相談を受けた。指導してくださる先生を探した。言葉のわからない子どもたちに教えるということ、しかもボランティアとなるとなかなか良い返事をいただけなかった。 知人の紹介で、やっと大泉町の若柳美翔さんにめぐりあえた。「ブラジル人に教えることは初体験だが、やってみましょう」と力強い返事をいただいた。練習が始まった。子どもたちは言葉もわからず、リズムもなじみのない動きに、とまどっている様子だった。踊ることは無理かもしれないと思った。夕日のさす教室で、先生はあきらめずに身振り手振りで、額に汗を浮かべながら、根気よく指導を続けた。協力者は次第に増え、花笠や浴衣、帯も集まってきた。小さな子どもたちは日本語の歌を練習した。「うさぎのダンス」「証城寺の狸囃子」を選曲した。ともに日本特有のリズム感の曲である。 日本の人たちも、子どもから大人まで負けずに練習した。復興の願いをこめ、日本の美しい風景や励ます気持ちを表現した曲を選曲した。「上を向いて歩こう」では、口笛をどうしても入れたかったが、なかなかうまく吹ける人がいなかった。すると、太田市教育長から「できますよ」という返事があった。それは大きなものだった。言葉がわからなくても歌の意味を理解できるように、「故郷」を手話で練習した。当日、動作を紹介しながら、単語をポルトガル語で説明し、会場全体で「故郷」を合唱した。 公演後さまざまな反響があった。日本の子どもたちは、日本人なのに踊ったことのない花笠踊りを自分たちも踊ってみたいという。ブラジルの人たちは日本の歌を聴いて、自然に涙が出てきたという。そして、花笠踊りを踊った子どもたちは「もっとこの踊りのことが知りたい。日本の文化を学びたい」と言ってきた。 同じ空間の中で、ひとつのことをしたことによって得られた「絆」。言葉を超えるものが、ここには確かにあったと思う。私たちは、12月11日に大泉町文化むらで「響悠空間」を開催することにした。もっと多くの人に、あの美しい花笠踊りを見てもらいたい。 (上毛新聞 2011年11月4日掲載) |