視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
ゆいの家主宰  高石 知枝(高崎市菊地町)



【略歴】愛知県生まれ。愛知教育大卒。元小・中学校教員。2001年に退職。「ゆいの家」を拠点に、料理教室などの「食」にまつわる啓発活動を行っている。


「食」へのこだわり



◎生きることにつなげる



 やっぱり「食」が大事。そう思い、4月から「ゆいの家」の活動拠点を移して、再々スタートしました。

 私は、10年前に教員をやめて、「ゆいの家」という小さな活動を始めました(詳しい活動内容は「ゆいの家」のブログを見ていただければと思います)。これまでの活動を振り返り、これからは「食」にこだわっていこうと決めました。

 「食」は、すべての人にかかわること。ただおなかが満足すればいいだけの問題ではなく、食べたものが体を作り、心まで影響してくるということを、今までの出会いから学びました。

 おいしいものを食べる時に怒りながら食べる人はいません。「食」は自然と心をなごませ、「おいしいね」と一緒に食べる関係に争いはなく、人と人をつなげていく力もあります。「食」はいのちであり、その人の生き方そのものなのです。

 戦後、私たちが学んできた「食」は、栄養学という、カロリーを中心としたものでした。食べ物の栄養をすべて数字で測り、食生活そのものもどんどん欧米化してきました。

 それまであまり口にしてこなかった肉や砂糖、乳製品など、一見食文化は華やかになりましたが、かつてなかった病気がどんどん増え、がんは言うまでもなく、それが若年層にも広がっています。

 医療がこれだけ発達しているのに、病気が減らないどころか増えている世の中っておかしいと思いませんか。病気は突然やってくるものではなく、食べたものでつくられます。また、病気になれば、自分のしたいこともしにくくなります。

 それに一番早く気づいたのはアメリカでした。あまりにも医療費がかさみ何とかしなければと、アメリカ上院栄養問題特別委員会が2年間かけて世界中を調査した結果、かつての日本食がいいということが1977年、マクガバン報告として出されています(詳しくは『今の食生活では早死にする』今村光一著)。しかし、私たちには全く知らされず、日本ではその後も欧米化がさらに加速されていきました。そしてその結果が今の現状です。

 若杉友子さんは「食が陰謀と戦略の沈黙の兵器になっている」とまで言っていますが、戦前の良き日本の食文化を敗戦という負い目から戦後あっさりと捨てさせられたのです。

 私は「食」にこだわることで、「ゆいの家」活動を医や農につなげ、さらに生きることすべてにつなげていきたいと思います。その入り口として、料理教室などをすることで、単に知識だけでなく、実際の日々の生活の中に生かしてもらえるようにしたいと思います。ただ、まだ4月から始めたばかりの思考錯誤状態。思いだけが膨らんでいますが、こんな私の思いをお伝えする場が、少しずつできればと思います。







(上毛新聞 2011年11月12日掲載)